一 期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員の任用の当時、右職員が配属された国立大学付属図書館の閲覧掛の事務量が正規任用に係る常勤職員のみによって処理することができる範囲を超えていたが、直ちに常勤職員の定員を増加することは実際上困難であり、同掛の業務のうち図書の貸出し、返却図書の受領等のいわゆるカウンター業務は、特別の習熟、知識、技術又は経験を必要としない代替的業務であって、日々雇用職員によっても適正に処理できるものであるという判示の事実関係の下においては、日々雇用職員として任用することを明示した上で、右職員をカウンター業務に従事させることを予定して任用したことは、違法とはいえない。 二 任命権者が期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員を任用予定期間満了後に再び任用しなかったとしても、その権利又は法的利益が侵害されたものと解することはできず、任命権者が、右職員に対して、任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど、右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がない限り、国家賠償法に基づく損害賠償責任を認める余地はない。
一 期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員の任用が違法ということはできないとされた事例 二 期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員を任用予定期間満了時に再び任用しない措置と国家賠償法に基づく損害賠償責任の成否
国家公務員法60条,人事院規則8―12第74条1項3号・2項,国家賠償法1条1項
判旨
期限付任用に係る非常勤の国家公務員(日々雇用職員)は、任用予定期間の経過により当然に退職し、再任用を期待する法的利益は原則として認められないが、任命権者が継続任用を確約するなど特別の事情がある場合には、期待を裏切られた損害について国家賠償法上の賠償が認められ得る。
問題の所在(論点)
1. 期限付任用の国家公務員(日々雇用職員)として任用することの適法性 2. 任用予定期間満了後の再任用に対する法的利益の有無 3. 再任用されないことによる損害賠償請求の可否
規範
1. 国家公務員法上、職員の任用は原則として無期限であるが、定員増加が困難な状況下で、特別の知識等を要しない代替的業務に従事させるために日々雇用職員として任用することは、同法の趣旨に反しない。 2. 日々雇用職員は、任用予定期間の満了により当然に退職し、再任用を要求する権利や期待する法的利益は原則として有しない。 3. ただし、任命権者が任用継続を確約・保障するなど、継続への期待が無理からぬものとみられる「特別の事情」がある場合には、不法行為(国家賠償法1条1項)に基づく損害賠償が認められ得る。
重要事実
上告人は、D大学付属図書館にて日々雇用職員(任期1日、任用予定期間内は日々更新)として採用された。業務内容はカウンターでの図書貸出・返却受領等で、特別な習熟を要しないものであった。大学側は常勤職員の定員増が困難なため非常勤職員で対応していたが、昭和59年3月30日の任用予定期間満了をもって上告人を退職扱いとし、再任用しなかった。上告人は、任用それ自体の違法性や、再任用への法的期待が侵害されたとして争った。
あてはめ
1. 本件業務は代替的・事務的なカウンター業務であり、常勤職員の増員が困難な事情も認められるため、日々雇用職員としての任用は適法である。 2. 上告人は日々雇用職員として任用されたものである以上、期間満了により当然に退職する立場にあり、再任用を要求する権利等は認められない。 3. 本件では、任命権者が任用継続を確約したなどの事実は認められず、継続への期待が無理からぬものといえる「特別の事情」は存在しない。したがって、再任用拒否による法的利益の侵害はない。
結論
日々雇用職員の任用は適法であり、期間満了による退職も正当である。再任用への期待についても、本件では「特別の事情」が認められないため、損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
公務員における期限付任用の限界と、更新拒絶(雇止め)類似の事案における救済の枠組みを示した判例である。行政法上の権利としては認められにくいが、民法上の雇止め法理の類推適用ではなく、国家賠償法上の「期待利益の侵害」という構成で救済の余地を残している点に特徴がある。
事件番号: 令和5(受)906 / 裁判年月日: 令和6年10月31日 / 結論: 破棄差戻
大学の人間生活学部人間生活学科生活福祉コースにおいて、介護福祉士等の資格及びその実務経験を有する教員により、介護実習、レクリエーション現場実習といった授業等が実施されていたなど判示の事情の下においては、上記コースの講師の職は、大学の教員等の任期に関する法律4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たる。