一 労働者の新規採用契約においてその適性を評価し、判断するために期間を設けた場合には、右期間の満了により右契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。 二 試用期間付雇用契約により雇用された労働者が試用期間中でない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取扱いにも格段異なるところはなく、試用期間満了時に本採用に関する契約書作成の手続も採られていないような場合には、他に特段の事情が認められない限り、当該雇用契約は解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。
一 労働者の新規採用契約においてその適性の評価・判断のために設けられた期間の性質 二 試用期間付雇用契約の法的性質
労働基準法第2章
判旨
新規採用時の契約期間が労働者の適性評価を目的とする場合、期間満了で当然に雇用が終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り、当該期間は試用期間と解される。その性質が解約権留保付雇用契約である場合、期間満了による終了には解約権行使の適法性が必要となる。
問題の所在(論点)
労働者の適性評価を目的として設けられた契約期間の法的性質、および期間満了による雇用の終了が認められるための要件(解約権留保付雇用契約の成否と解雇権濫用法理の適用)。
規範
1. 期間を設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間満了により雇用が当然に終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り、当該期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解する。 2. 試用期間中の労働者が他の労働者と同じ職務に従事し、使用者の取扱いも格段変わらず、満了時に再雇用の契約書作成手続も採られない場合は、解約権留保付雇用契約と解する。 3. 解約権の行使は、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合にのみ許される。
重要事実
事件番号: 平成1(オ)854 / 裁判年月日: 平成2年6月5日
【結論(判旨の要点)】新規採用時の期間設定が適性判断を目的とする場合、期間満了により当然に契約が終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り、当該期間は試用期間であり、契約の性質は解約権留保付雇用契約と解するのが相当である。 第1 事案の概要:学校法人Xは、新規採用の常勤講師Yに対し、教員としての適性を吟味する判断期…
学校法人Xは、新規教員としてYを採用する際、適性吟味のため「一応一年」の期間を設けると説明し、Yもこれを了承して勤務を開始した。採用後、Yは「期間満了により当然退職する」旨の記載がある契約書に署名したが、当時の状況として生徒数は増加傾向にあり、特定の年度に限って期限付職員を採用する必要性は乏しかった。また、Xの理事長は面接時に「30年でも40年でも頑張ってくれ」と長期雇用を期待させる発言をしていた。その後、Xは期間満了を理由に雇用を終了させた。
あてはめ
本件期間は、X自ら教員経験のないYの適性を吟味する趣旨であったと認めており、試用期間としての性質を有する。理事長の「一応」という表現や長期勤務を期待させる発言に照らせば、期間満了により当然に終了する旨の「明確な合意」があったとは断じがたい。また、契約書に当然退職の条項があっても、契約成立後の署名であることや、記載内容(生徒数等の事情により当該年度に限るという点)が実態に反することから、契約内容を適切に表現したものか疑念がある。したがって、本件は解約権留保付雇用契約であり、期間満了による終了には、留保解約権の行使としての客観的合理的理由と社会的相当性が必要となる。
結論
本件雇用契約に付された1年の期間を契約の存続期間と解し、期間満了により当然に終了するとした原判決は誤りである。適格性欠如による解約権行使の適法性を審理させるため、差し戻しを免れない。
実務上の射程
形式上「期間の定めのある契約」であっても、実態が適性判断(試用)目的であれば、安易な雇止めを許さず、解約権留保付雇用契約として解雇権濫用法理に準じた厳しい制約を課す。契約期間の性質決定においては、契約書の文言だけでなく、採用時の説明や募集の背景、長期雇用の期待の有無を総合考慮する点に実務上の重要性がある。
事件番号: 平成4(オ)996 / 裁判年月日: 平成6年7月14日 / 結論: 棄却
一 期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員の任用の当時、右職員が配属された国立大学付属図書館の閲覧掛の事務量が正規任用に係る常勤職員のみによって処理することができる範囲を超えていたが、直ちに常勤職員の定員を増加することは実際上困難であり、同掛の業務のうち図書の貸出し、返却図書の受領等のいわゆるカウンター業…