判旨
新規採用時の期間設定が適性判断を目的とする場合、期間満了により当然に契約が終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り、当該期間は試用期間であり、契約の性質は解約権留保付雇用契約と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
労働者の適性判断を目的として設けられた1年の雇用期間が、期間満了により当然に契約が終了する「存続期間」にあたるか、それとも「試用期間(解約権留保付雇用契約)」にあたるか。
規範
1. 新規採用時に期間を設けた趣旨・目的が労働者の適性評価・判断にある場合、期間満了により契約が当然に終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り、その期間は存続期間ではなく「試用期間」と解する。 2. 試用期間中の実態(職務内容や処遇が他の労働者と不変、本採用時の契約書作成なし等)に照らし、他に特段の事情がない限り、その法的性質は「解約権留保付雇用契約」と解する。 3. 試用期間満了による終了には、留保解約権の行使が客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認されることを要する。
重要事実
学校法人Xは、新規採用の常勤講師Yに対し、教員としての適性を吟味する判断期間として1年の期間を設けて雇用した。採用面接時、理事長は期間を「一応1年」とし「30年でも40年でも頑張ってくれ」と述べていた。採用後、Yは「期間満了により当然退職する」旨の記載がある契約書に署名したが、これは契約成立後1ヶ月以上経過した後であった。また、契約書には「年度限りの採用の必要性」が記載されていたが、実際には生徒数増加により増員が必要な状況にあった。Xは期間満了を理由にYを雇止めした。
あてはめ
本件期間は、新規教員の適性を1年間の行事を通じて判断する趣旨で設けられたものであり、本来的に適性評価を目的とする。理事長の「一応」という発言や、長期勤務を期待させる言動から、期間満了による当然終了の「明確な合意」があったとは断定しがたい。また、後出しで署名させた契約書の「当然退職」条項や「年度限りの採用理由」は、実態(生徒数増加)や作成経緯(契約成立後の署名)に照らせば、契約の真実の趣旨を適切に反映しているとはいえない。したがって、期間満了により当然に契約が終了する特段の事情は認められず、本件期間は試用期間としての性質を有する。
結論
本件雇用契約は、特段の事情がない限り、1年の試用期間を付した解約権留保付雇用契約と解される。期間満了による終了が認められるためには、留保解約権の行使(本採用拒否)に客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要である。
実務上の射程
有期雇用契約の形式をとっていても、その実質が「適性判断」にある場合は試用期間と解され、解雇権濫用法理に近い制限(三菱樹脂事件参照)を受けることを示した。答案上は、まず期間設定の目的を確定し、形式的な契約書の文言よりも採用過程の言動や期待、業務の実態を重視して「特段の事情」の有無を検討する際に用いる。
事件番号: 昭和56(オ)225 / 裁判年月日: 昭和61年12月4日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成27(受)589 / 裁判年月日: 平成28年12月1日 / 結論: その他
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事件番号: 昭和45(オ)1175 / 裁判年月日: 昭和49年7月22日 / 結論: 棄却
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