高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め,継続雇用を希望する高年齢者のうち当該基準を満たす者を再雇用する旨の制度を導入した事業主が,継続雇用を希望する高年齢者たる従業員につき,当該基準を満たしていないとして再雇用しなかった場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,当該事業主と当該従業員との間に,従前の雇用契約の終了後も当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である。 (1) 当該基準は,高年齢者の在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を所定の方法で点数化し,総点数が0点以上の高年齢者を再雇用するというものであり,当該制度においては,再雇用される高年齢者の継続雇用の最長期限及び労働時間の上限が定められ,従前の基本給の額及び再雇用後の労働時間から所定の計算式で算出される金額が本給の最低基準とされていた。 (2) 当該従業員は,在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を上記方法で点数化すると,総点数が1点となり,当該基準を満たす者であった。 (3) 従前の雇用契約の終期の到来により当該従業員の雇用が終了したものとすることをやむを得ないものとみるべき特段の事情はうかがわれない。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に基づく再雇用の制度を導入した事業主とその従業員との間に,当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係の存続が認められた事例
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条,労働契約法6条
判旨
高年齢者雇用安定法に基づき継続雇用基準を定めた場合において、同基準を満たす者が再雇用を希望したときは、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない限り、再雇用されたのと同様の雇用関係が存続する。その際の労働条件は、事業主が定めた継続雇用規程の定めに従うものと解される。
問題の所在(論点)
高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用基準を満たす労働者が再雇用を希望したにもかかわらず、使用者が基準を満たさないと誤認して拒否した場合、労働契約法上の地位が認められるか。また、認められる場合の労働条件はどのように決定されるか。
規範
継続雇用基準を定めた制度が導入されている場合、当該基準を満たす労働者が定年後等の継続雇用を希望したときは、実務上の特段の事情がない限り、雇用が継続されることへの合理的期待が認められる。したがって、使用者が当該基準を満たさないと誤信して再雇用を拒否することは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない限り許されず、従前の雇用関係と実質的に同様の雇用関係が存続すると解するのが相当である。その際の労働条件は、あらかじめ定められた継続雇用規程等の定めに従う。
重要事実
会社(上告人)は、法9条2項に基づき「総点数が0点以上の者を採用し、10点未満の者は週30時間以内とする」等の継続雇用規程を定めていた。定年後の嘱託契約期間満了を控えた労働者(被上告人)は継続雇用を希望したが、会社は査定の誤りにより総点数が基準未満であると誤認し、再雇用を拒否した。実際には被上告人の点数は1点であり、基準を満たしていた。
あてはめ
被上告人は査定点数が1点であり、本件規程の定める継続雇用基準(0点以上)を満たしていた。そのため、嘱託契約終了後も雇用が継続されることについて合理的な期待がある。これに対し、会社が評価を誤り基準未達として雇用を終了させたことは、他に特段の事情がない限り客観的合理性および社会的相当性を欠く。よって、本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続する。労働条件については、規程上、点数10点未満の者は「週30時間以内」とされており、他に30時間を下回る事情がない以上、週30時間の労働条件が適用される。
結論
上告人と被上告人の間には、本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係(週30時間勤務)が存続する。会社はこれに基づく賃金を支払う義務を負う。
実務上の射程
本判決は、高年齢者雇用安定法に基づく再雇用拒絶について、実質的に解雇権濫用法理(労働契約法16条)や雇止め法理(同19条)と類似の枠組みを用いて労働者保護を図ったものである。答案上は、基準該当性という「客観的事実」に基づき雇用継続の合理的期待を肯定し、拒絶の「合理的理由・相当性」を否定する流れで論じるべきである。また、労働条件が規程によって一義的に定まる場合には、地位確認だけでなく具体的な賃金請求も認容される点に注意を要する。
事件番号: 平成29(受)347 / 裁判年月日: 平成30年9月14日 / 結論: 棄却
1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めは,次の⑴,⑵など判示の事情の下においては,労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものである。 ⑴ 上記期間雇用社員の従事する業務は屋外業務,立った状態での作業,機動車の乗務,機械操作等であるところ,当…
事件番号: 平成27(受)589 / 裁判年月日: 平成28年12月1日 / 結論: その他
私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約は,①当該労働契約において,3年の更新限度期間の満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,これを希望する教員の勤務成績を考慮して当該大学を運営する学校法人が必要であると認めた場合である旨が明確に定められており,当該教員もこのことを十分に認識した上で当該労働契…