懲戒免職処分を受けた国家公務員が当該処分係争中に公職の候補者として立候補の届出をした場合においても、同人の国家公務員たる地位は、右立候補届出の時点で確定的に消滅する。
国家公務員が懲戒免職処分係争中にした公職の候補者としての立候補の届出と右公務員たる地位の消滅
公職選挙法89条1項,公職選挙法90条,国家公務員法102条2項
判旨
懲戒免職処分の係争中にある国家公務員が公職選挙の立候補届出をした場合、公職選挙法90条により、将来的に処分が取り消される可能性を含めて公務員の地位は確定的に消滅する。
問題の所在(論点)
懲戒免職処分の効力を争っている者が公職選挙に立候補した場合に、公職選挙法90条の規定により公務員の地位が確定的に消滅するか。また、後に処分が修正・取消された場合に、遡及的に公務員の地位を回復できるか。
規範
国家公務員法102条2項及び公職選挙法89条1項は、公務員の地位の選挙利用防止等の観点から、公務員と公職候補者の地位の両立を認めず二者択一の関係に置いている。そのため、同法90条に基づき、立候補制限のある公務員が立候補の届出をしたときは、届出の日に当該公務員の地位を自動的・確定的に失う。この効果は、懲戒免職処分の係争中に立候補した場合であっても、後に判定や判決によって処分が修正・取消される可能性を含めて地位を消滅させるものである。
重要事実
郵政省職員であった上告人は、昭和54年4月に懲戒免職処分を受けた。上告人は人事院に審査請求をしたが、その係争中の同年9月に市議会議員選挙への立候補を届け出て当選した。その後、昭和59年に人事院が当初の処分を「停職1年間」に修正する判定を行った。上告人は、判定により遡及的に公務員としての地位を回復したと主張し、停職期間満了後の給与支払いを求めて提訴した。
あてはめ
公職選挙法90条の趣旨は、公務員が立候補届出と同時に自動的に地位を失うことで、違反状態の発生を防止することにある。本件において、上告人は免職処分の係争中であっても、立候補届出をした時点で公務員としての地位(回復の可能性を含む)は確定的に消滅したといえる。その後に人事院の判定によって処分が「停職1年」に修正されたとしても、一度確定的に消滅した公務員たる地位そのものが回復する余地はないと解される。
結論
上告人の郵政省職員たる地位は立候補の日に確定的に消滅しており、その後の人事院判定によっても回復しない。したがって、給与請求は認められない。
実務上の射程
公務員の政治活動制限と公職選挙法90条の「失職のみなし」規定に関するリーディングケース。懲戒免職という強力な処分の効力を争っている不安定な地位にある者であっても、自ら立候補という選択をした以上、その地位は確定的に失われるという厳格な判断枠組みを示すものである。
事件番号: 昭和62(行ツ)119 / 裁判年月日: 平成元年1月17日 / 結論: 棄却
地方公務員法二八条四項、一六条二号は、憲法一三条、一四条一項に違反しない。
事件番号: 昭和43(行ツ)44 / 裁判年月日: 昭和49年9月2日 / 結論: 棄却
一、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、抗告訴訟の対象となる行政処分である。 二、不当労働行為該当の瑕疵を有する現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、違法ではあるが、右瑕疵が重大かつ明白でないかぎり、当然無効ではない。 三、国家公務員法八九条一項所定の処分を受けた現業国家公務員…