一 行政事件訴訟法附則第三条にいう「旧法によつて生じた効力」とは、旧法を適用してすでに確定した個々の法律上の効力を指すものと解するのが相当である。 二 免職された公務員が、免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をしたため、法律上その職を辞したしたものとみなされるにいたつた場合においても、行政事件訴訟法第九条のもとでは、当該訴の利益を認めるのが相当である。
一 行政事件訴訟法附則第三条但書にいう「旧法によつて生じた効力」の意義。 二 免職された公務員が免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をした場合と行政事件訴訟法第九条のもとにおける当該訴の利益。
行政事件訴訟法9条,行政事件訴訟法附則3条
判旨
公務員に対する免職処分後、別な理由で再任用の可能性がなくなった場合でも、処分当時の給料請求権等の回復が認められる余地がある限り、当該処分の取消しを求める法律上の利益は失われない。
問題の所在(論点)
公務員への免職処分後、別個の事由により職員としての地位を回復する見込みがなくなった場合において、なお免職処分の取消しを求める「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項括弧書にいう「法律上の利益」とは、処分によって剥奪された身分や資格の回復のみを指すものではない。処分の効力が消滅した後であっても、当該処分が取り消されることによって、不当に侵害された給料請求権その他の権利・利益を回復できる場合には、なお取消しを求める法律上の利益を有するものと解すべきである。
重要事実
郵政省職員であった上告人は、昭和24年に罷免処分を受けたが、その後の昭和26年に市議会議員に立候補し当選した。公職選挙法90条の規定により、立候補の時点で公務員の職を辞したものとみなされるため、仮に本件免職処分が取り消されても上告人は職員たる地位を回復することはできない。第一審および原審は、この地位回復の不能を理由に、訴えの利益を欠くとして請求を棄却した。
あてはめ
本件免職処分は、取り消されない限り有効なものとして存続し、上告人が本来得られたはずの給料請求権等の行使を妨げる法的障害となる。上告人は、市議会議員への立候補により職員としての地位自体は回復できないものの、免職処分から立候補までの期間に対応する給料請求等の権利・利益については、依然として侵害された状態にあるといえる。したがって、これらの利益を回復するための手段として、本件免職処分の効力を排除する判決を求める必要性は消滅していない。
結論
上告人は、免職処分の取消しによって回復すべき権利・利益を保持しているため、なお本件訴訟を追行する法律上の利益を有する。原判決を破棄し、第一審に差し戻す。
実務上の射程
「回復すべき法律上の利益」を身分回復に限らず、付随する金銭的利益等まで広げた重要判例である。答案上は、訴えの利益の検討において「処分の効果が消滅した後」の類型として、本条項を引用し、金銭的請求(国家賠償請求等)の前提としての利益を肯定する論拠として用いる。
事件番号: 昭和35(オ)374 / 裁判年月日: 昭和35年9月30日 / 結論: 棄却
一 市議会議員選挙の当選の効力に関する訴願裁決の取消を求める訴について市選挙管理委員会は被告たる適格を有しない。 二 市議会議員選挙の当選の効力に関する異議決定、訴願裁決がともに当初の当選人決定を維持した場合においては、右当選の効力に関する訴について市選挙管理委員会は被告たる適格を有する。 三 公職選挙法第二五二条によ…
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…