判旨
解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。
問題の所在(論点)
公選職にある者が、解職投票の効力を争う訴訟の継続中に任期満了によって退職した場合、なお当該訴訟を維持する「法律上の利益」が認められるか。
規範
行政処分等の取消しを求める訴えにおいて、処分後に生じた事情の変化により、当該処分を取り消したとしても原告が受けるべき法的利益を回復することができない場合には、訴えの利益(法律上の利益)が消滅し、請求は棄却(実務上は却下)されるべきである。
重要事実
村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委員会)は、当該投票を有効とする旨の裁決を行った。被上告人は、この裁決の取消し及び投票無効の確認を求めて出訴したが、訴訟継続中に村長としての法定任期4年が経過し、被上告人はその職を退くこととなった。
あてはめ
被上告人は昭和22年4月に村長に就任したが、昭和26年4月の経過により4年の法定任期が満了している。上告理由書の提出時点において、被上告人が既に村長の職にないことは明らかである。解職投票やこれに関する裁決の効力を争う目的は、村長としての地位を保全することにあるが、任期満了という客観的事実により既にその地位を失っている以上、裁決を取り消したとしても被上告人が村長の職に復帰することはない。したがって、本訴を維持して裁決の取消し等を求める必要性は失われているといえる。
結論
任期満了により職を失った以上、訴えの利益は消滅しており、本訴請求は棄却されるべきである(原判決破棄・請求棄却)。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」に関する基礎的な判例である。公職の地位を争う訴訟において、任期満了や死亡、議会の解散などにより当該地位を回復する見込みがなくなった場合に、訴えの利益が消滅するという準則を示す。答案上は、処分取消しによって回復される利益の有無を検討する際の帰結として利用する。
事件番号: 昭和26(オ)123 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: その他
村長解職賛否投票の効力に関する訴訟係属中、村長の任期満了としたときは、訴の利益は失われる。
事件番号: 昭和33(オ)118 / 裁判年月日: 昭和35年12月7日 / 結論: 棄却
村長解職賛否投票の効力に関する訴は、右村が吸収合併によつてなくなつた後においては、その利益がなくなつたものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…