判旨
普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
解職投票において解職が有効に確定した後において、解職請求の前提となった署名簿の署名の効力を争う訴えの利益が認められるか。
規範
地方自治法上の署名簿の署名の効力は、同法に定める独自の争訟手続(縦覧期間内の異議申立及び同法74条の2等の訴訟)によってのみ確定される。解職投票の効力に関する訴訟において、当該手続により確定されていない個々の署名の無効を主張することは許されない。また、署名の効力を争う訴訟の意義は、解職投票の前提となる法定署名数の充足を争う点にある。したがって、解職投票の結果、賛成多数により解職が有効に確定し、投票自体の効力を争い得なくなった場合には、署名の効力を争う訴えの利益は失われる。
重要事実
上告人は、普通地方公共団体の長の解職請求(リコール)に関し、署名簿の署名の効力を争って出訴した。しかし、本件訴訟の継続中に、既に当該解職請求に基づく解職賛否の投票が実施された。投票の結果、解職賛成の投票が投票者の過半数を得て、この投票自体の効力については何ら不服の申立てがなされず、確定するに至った。このような状況下で、なお署名の効力を争う訴えの利益が存続するかが争点となった。
あてはめ
解職請求の署名の効力に関する訴訟は、最終的に解職投票の効力を争うに際し、署名総数が法定数(有権者総数の3分の1)を欠くことを主張するための基礎となる点に意義がある。本件では、既に解職投票が実施され、過半数の賛成により解職という結果が生じている。この投票の効力自体が不服申立ての欠如により争い得なくなった以上、もはや署名総数が法定数に達しないことを主張して解職の結果を覆す余地はない。したがって、前提となる個々の署名の効力を確定することを目的とする本件請求を維持する利益は認められない。
結論
解職投票の結果が確定し、署名の不足を理由として解職の効果を争うことができなくなった以上、署名の効力を争う訴えの利益は失われるため、上告を棄却すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1122 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
地方公共団体の長の解職賛否投票で有効投票の過半数が解職に賛成であつた場合、右投票の効力について争訟の提起がない以上、解雇請求者署名簿の署名の効力に関する訴は、これを維持する利益が失われる。
実務上の射程
行政上の争訟手続が段階的に整備されている場合において、後続の手続(投票)が完了・確定したことにより先行手続(署名)を争う実効性が失われた際の、訴えの利益の消滅に関する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…
事件番号: 昭和33(オ)878 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
地方自治法第七四条の二第八項の訴訟には行政事件訴訟特例法第二条の適用はない。
事件番号: 昭和28(オ)1420 / 裁判年月日: 昭和30年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】町長解職請求署名簿等の無効確認を求める訴えについて、別の署名簿に基づく解職投票が執行され、その結果が確定して争えなくなった後は、当該訴えを維持する利益は失われる。 第1 事案の概要:1. 原告(上告人)は、町長解職請求(リコール)署名簿の署名を有効とした決定および異議申立却下決定等の無効確認を求め…
事件番号: 昭和28(オ)738 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
一 直接請求の署名簿の署名捺印を求めることを請求代表者が第三者に委任した場合に、その委任が直ちに市町村選挙管理委員会に届け出られなくても、右委員会の署名の効力審査前にその届出があつたときは、右受任者の集めた署名が地方自治法第七四条の三第一項第一号に違反し無効であるということはできない。 二 地方自治法第七四条の三第二項…