地方公共団体の長の解職賛否投票で有効投票の過半数が解職に賛成であつた場合、右投票の効力について争訟の提起がない以上、解雇請求者署名簿の署名の効力に関する訴は、これを維持する利益が失われる。
地方公共団体の長の解職賛否投票後の解職請求者署名簿の署名の効力に関する訴の利益
地方自治法81条,地方自治法74条の2,地方自治法85条1項,公職選挙法202条,公職選挙法203条
判旨
普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、法が定める個別の不服申立手続によってのみ争うことができ、事後の投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職賛否の投票が有効に成立した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
地方自治法81条等に基づく解職請求における署名の効力を、投票実施後に独立して争うことができるか、また、投票の効力を争う訴訟において署名の効力を主張することが許されるか。
規範
地方自治法上の解職請求(リコール)における署名簿の署名の効力は、同法が定める特別の異議申立・出訴手続(74条の2等)によってのみ確定されるべきものであり、他の手続で争うことは許されない。署名簿の署名に関する訴訟は、最終的に解職投票の前提となる法定数の充足を確定する基礎としての意義を有するにすぎないため、投票が実施されその効力が確定した後は、個別の署名の無効を訴える訴えの利益は失われる。
重要事実
普通地方公共団体の長の解職請求につき、有権者総数の3分の1以上の署名が集まったとして解職賛否の投票が実施された。投票の結果、解職賛成が過半数に達し、投票自体の効力については争いがなく確定した。しかし、上告人は、解職請求の前提となった署名簿の署名に無効なものが含まれていると主張し、署名の効力を争う訴訟を継続した。
事件番号: 昭和28(オ)1420 / 裁判年月日: 昭和30年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】町長解職請求署名簿等の無効確認を求める訴えについて、別の署名簿に基づく解職投票が執行され、その結果が確定して争えなくなった後は、当該訴えを維持する利益は失われる。 第1 事案の概要:1. 原告(上告人)は、町長解職請求(リコール)署名簿の署名を有効とした決定および異議申立却下決定等の無効確認を求め…
あてはめ
地方自治法は、署名簿の縦覧期間内の異議申立や出訴期間を限定することで、解職手続の迅速な解決を図っている。解職賛否の投票がすでになされ、投票者過半数の賛成が得られた上で、その投票結果自体に対する不服申立がない場合、もはや署名総数が法定数に達しないことを主張する余地はない。したがって、個々の署名の効力を確定させる実益は失われており、訴えの利益を認めることはできない。
結論
解職賛否の投票が有効に成立し、結果が確定した以上、署名の効力を争う訴えは維持する利益がなく、却下または棄却されるべきである。
実務上の射程
行政救済法における訴えの利益(狭義の訴えの利益)の消滅事由として位置づけられる。また、先行する手続(署名の有効判定)の瑕疵を後続する手続(投票)において主張することの制限(一種の拘束力または手続の遮断)を認めたものとして、行政争訟の体系的理解に資する判例である。
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…
事件番号: 昭和28(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。 第1 事案の概要:上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提…
事件番号: 昭和28(オ)18 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
一 地方公共団体の長の解職請求者名簿に部落民が部落会の決議により署名し、あるいは請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して署名を集めたからといつて、それだけでその署名が無効であるとはいえない。 二 署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかについての市町村選挙管理委員会の認定については、裁判所はその当否を判断するこ…