判旨
町長解職請求署名簿等の無効確認を求める訴えについて、別の署名簿に基づく解職投票が執行され、その結果が確定して争えなくなった後は、当該訴えを維持する利益は失われる。
問題の所在(論点)
町長解職請求の手続的な瑕疵を争う訴訟の係属中に、別の手続によって当該町長の解職が確定した場合、当初の訴えの利益は維持されるか(行政事件訴訟法36条、民事訴訟法134条関連)。
規範
行政処分等の無効確認を求める訴えにおいて、訴えの提起後に生じた事情の変化により、当該処分等の無効を判断するまでもなく請求の目的が達成されたり、あるいは判断を得ても原告の法的地位に回復すべき利益が認められなくなったりした場合には、訴えの利益(確認の利益)は失われる。
重要事実
1. 原告(上告人)は、町長解職請求(リコール)署名簿の署名を有効とした決定および異議申立却下決定等の無効確認を求めて本訴を提起した。2. 本訴の係属中、別の署名簿に基づく請求によって当該町長の解職賛否投票が執行された。3. その結果、有権者の過半数が解職に賛成し、かつ法定期間内に当該投票結果に対する不服申立がなされず、解職の効力が確定した。
あてはめ
上告人が争っていたのは特定の署名簿の有効性であるが、既に別の手続による解職投票が執行され、その効力が確定している。この投票結果が争うことができなくなった以上、当初の署名簿の有効性を争って無効確認判決を得たとしても、既に確定した「町長の解職」という法的状態を覆すことはできない。したがって、上告人が本訴を維持して判決を求める現実的な必要性および利益は消失したといえる。
結論
解職投票の効力が争えなくなった後は、本訴を維持する利益を失うため、請求は棄却(実質的には却下相当)されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(オ)1122 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
地方公共団体の長の解職賛否投票で有効投票の過半数が解職に賛成であつた場合、右投票の効力について争訟の提起がない以上、解雇請求者署名簿の署名の効力に関する訴は、これを維持する利益が失われる。
本判決は、選挙やリコール等の手続において、後続の決定的な事由(投票結果の確定等)が生じた場合の訴えの利益の消滅を認めたものである。答案上は、行政事件訴訟における訴えの利益の存続要件を論じる際、事情判決以前の段階で「回復すべき利益」が失われた例として、取消訴訟や無効確認訴訟の双方で活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。 第1 事案の概要:上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提…
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…
事件番号: 昭和26(オ)149 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分等の効力を争う訴えにおいて、対象となる公職者の任期が満了した場合には、当該処分の効力を争う法律上の利益(訴えの利益)は失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年1月15日に施行された石川県鳳至郡a町長の解職投票(リコール)の結果等の効力に関し、訴願裁決の取消しおよび解職投票の無効を…