町長が退職したときは、分職選挙法第二一〇法(昭和二九年法律第二〇七号による削除前)によつて右町長の当選無効を求める訴は、その法律上の利益を失う。
町長の退職と公職選挙法第二一〇条(昭和二九年法律第二〇七号による削除前)による右町長当選無効の訴の利益
公職選挙法210条(昭和29法207号による削除前のもの)
判旨
公職選挙法に基づき町長の当選無効を求める訴訟において、被告である町長が任期中に退職した場合には、当該訴えの提起による法律上の利益が消滅する。
問題の所在(論点)
町長の当選無効を求める訴訟の係属中に、被告である町長が退職した場合、当該訴訟を継続する「法律上の利益」が認められるか。
規範
行政訴訟(選挙訴訟を含む)における訴えの利益は、当該処分や選挙結果の効力を争うことによって回復すべき法的利益が存続していることを要する。被告たる公務員が職を辞したことにより、もはや当選の効力を争う実益が失われた場合には、特段の事情がない限り法律上の利益は失われるものと解する。
重要事実
被上告人(原告)らは、当時の公職選挙法210条に基づき、上告人(被告)の町長当選無効を求める訴えを提起した。しかし、上告人は訴訟の係属中に町長退職の申出を行い、正規の手続きを経て昭和30年10月1日付で退職した。
事件番号: 昭和28(オ)1420 / 裁判年月日: 昭和30年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】町長解職請求署名簿等の無効確認を求める訴えについて、別の署名簿に基づく解職投票が執行され、その結果が確定して争えなくなった後は、当該訴えを維持する利益は失われる。 第1 事案の概要:1. 原告(上告人)は、町長解職請求(リコール)署名簿の署名を有効とした決定および異議申立却下決定等の無効確認を求め…
あてはめ
本件において、上告人は町長を退職しており、現にその職にない。当選無効の判決は、当該当選者が現に有する公職の地位を否定することを目的とするものであるが、上告人が既に退職した以上、その当選の効力をあえて無効とする法的必要性は消滅したといえる。したがって、被上告人らが求めている本訴請求は、その目的を達することができなくなったか、あるいは争うべき対象が実質的に失われたものと評価される。
結論
被告が退職したことにより、本訴請求はその法律上の利益を失うに至ったため、請求は棄却される(現行の実務上は訴え却下となるが、本判決当時の民訴法等の運用により請求棄却とされている)。
実務上の射程
選挙訴訟において、被選挙人の辞職や死亡等により資格喪失した場合の訴えの利益に関する基本的判例。行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」を検討する際、処分の効力消滅等により回復すべき利益がなくなった事案の準拠枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)149 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分等の効力を争う訴えにおいて、対象となる公職者の任期が満了した場合には、当該処分の効力を争う法律上の利益(訴えの利益)は失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年1月15日に施行された石川県鳳至郡a町長の解職投票(リコール)の結果等の効力に関し、訴願裁決の取消しおよび解職投票の無効を…
事件番号: 昭和30(オ)541 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当選の効力を争う訴訟において、選挙無効の事由を請求原因として主張することは本来許されないが、原審が事実上の判断を示している場合には、直ちに判決に影響を及ぼす法令違背とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、当選の効力を争う訴訟(当選無効訴訟)を提起したが、その中で選挙自体の無効事由を請求原因とし…
事件番号: 昭和28(オ)1122 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
地方公共団体の長の解職賛否投票で有効投票の過半数が解職に賛成であつた場合、右投票の効力について争訟の提起がない以上、解雇請求者署名簿の署名の効力に関する訴は、これを維持する利益が失われる。