判旨
市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。
問題の所在(論点)
町長解職請求の署名において、請求要旨に事実相違がある場合に「詐欺による署名」として無効となるか。また、選挙管理委員会による署名の有効・無効の決定に対し、裁判所がその当否を判断することは許されるか。
規範
直接請求制度における署名の有効性は、署名者の真実の意思に基づくものであるか否かにより判断される。解職請求要旨に多少の事実相違が含まれていたとしても、署名収集に際して特段の欺罔行為が認められず、署名者が当該役職者の解職を求める確実な意思を持って署名したと認められる場合には、その署名は有効である。また、選挙管理委員会による署名の有効・無効の決定は終局的なものではなく、裁判所は訴訟を通じてその当否を判断する権限を有する。
重要事実
上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提出された。上告人は、当該署名が詐欺や強迫に基づくものであるとして無効の決定を下した。具体的には、解職請求要旨に事実と相違する記載があることが詐欺に該当すると主張されたが、原審では署名収集に際して具体的な欺罔行為や強迫の事実は認められず、選挙人は町長解職の意思を持って署名したものと認定された。
あてはめ
本件では、署名収集者が署名者に対して特段の欺罔行為を行った事実は認められない。解職請求要旨に一部事実と異なる記載があったとしても、選挙人が町長を解職したいという確定的な意思に基づいて署名を行っている以上、その意思表示に瑕疵があるとはいえず、詐欺による無効は認められない。また、選挙管理委員会に署名の有効性を決定する権限があるからといって、裁判所の司法審査が排除される理由はないため、原審が署名を有効と判断したことは正当である。
結論
解職の意思に基づく署名である以上、要旨の多少の相違は有効性を左右せず、当該署名は有効である。上告棄却。
事件番号: 昭和28(オ)18 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
一 地方公共団体の長の解職請求者名簿に部落民が部落会の決議により署名し、あるいは請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して署名を集めたからといつて、それだけでその署名が無効であるとはいえない。 二 署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかについての市町村選挙管理委員会の認定については、裁判所はその当否を判断するこ…
実務上の射程
地方自治法上の直接請求における署名の有効性判断の基準を示した。請求主体側による積極的な欺罔(嘘をついて署名させる等)がない限り、動機の形成過程に多少の事実誤認(要旨の不正確さ)があっても、解職意思の存否を重視して有効性を広く認める傾向にある。答案上は、署名の「自由な意思」の有無を検討する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1122 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
地方公共団体の長の解職賛否投票で有効投票の過半数が解職に賛成であつた場合、右投票の効力について争訟の提起がない以上、解雇請求者署名簿の署名の効力に関する訴は、これを維持する利益が失われる。
事件番号: 昭和28(オ)1420 / 裁判年月日: 昭和30年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】町長解職請求署名簿等の無効確認を求める訴えについて、別の署名簿に基づく解職投票が執行され、その結果が確定して争えなくなった後は、当該訴えを維持する利益は失われる。 第1 事案の概要:1. 原告(上告人)は、町長解職請求(リコール)署名簿の署名を有効とした決定および異議申立却下決定等の無効確認を求め…
事件番号: 昭和28(オ)738 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
一 直接請求の署名簿の署名捺印を求めることを請求代表者が第三者に委任した場合に、その委任が直ちに市町村選挙管理委員会に届け出られなくても、右委員会の署名の効力審査前にその届出があつたときは、右受任者の集めた署名が地方自治法第七四条の三第一項第一号に違反し無効であるということはできない。 二 地方自治法第七四条の三第二項…
事件番号: 昭和28(オ)1439 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
農業委員会の委員として在職中の者を請求代表者の一人に加えてしゆう集した村長および村会議員解職請求の署名は、たとえ右の者が直接署名のしゆう集に従事しなかつたとしても、すべて法令の定める成規の手続によらない署名として無効である。