一 直接請求の署名簿の署名捺印を求めることを請求代表者が第三者に委任した場合に、その委任が直ちに市町村選挙管理委員会に届け出られなくても、右委員会の署名の効力審査前にその届出があつたときは、右受任者の集めた署名が地方自治法第七四条の三第一項第一号に違反し無効であるということはできない。 二 地方自治法第七四条の三第二項にいわゆる「詐偽」とは、署名の目的を偽つて署名を求めるような行為を指すものと解すべく、請求の要旨の記載またはその説明に事実に相違する点があつたからといつて、選挙人の署名を「詐偽」に基く署名ということはできない。
一 直接請求の署名簿の署名捺印を求めるについての請求代表者の委任が直ちに市町村選挙管理委員会に届け出られなかつた場合にその受任者が集めた署名の効力 二 地方自治法第七四条の三第二項にいわゆる「詐偽」の意義
地方自治法施行令92条2項,地方自治法施行令92条3項,地方自治法74条の2第1項,地方自治法74条の3第1項,地方自治法74条の3第2項
判旨
解職請求の署名委任の届出が遅延しても、選管の審査前に完了していれば署名は無効とならず、また、署名における「詐偽」とは署名目的自体の偽称を指し、請求要旨や説明に事実相違があるだけではこれに該当しない。
問題の所在(論点)
1. 署名受任者の届出遅延は、地方自治法74条の3第1項1号の「法令の定める成規の手続によらない署名」として無効事由となるか。2. 解職請求の要旨や説明の事実に相違がある場合、同法74条の3第2項の「詐偽」に該当するか。
規範
1. 署名収集の受任者の届出(地方自治法施行令92条3項)は、選挙管理委員会の審査便宜のための規定にすぎない。審査前に届出がなされれば、届出の遅延のみをもって「成規の手続によらない署名」として無効にはならない。2. 署名の無効事由たる「詐偽」(地方自治法74条の3第2項)とは、署名の目的を偽って署名を求める行為を指す。
重要事実
事件番号: 昭和28(オ)18 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
一 地方公共団体の長の解職請求者名簿に部落民が部落会の決議により署名し、あるいは請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して署名を集めたからといつて、それだけでその署名が無効であるとはいえない。 二 署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかについての市町村選挙管理委員会の認定については、裁判所はその当否を判断するこ…
市議会議員等の解職請求(リコール)において、署名収集の委任を受けた受任者Dについての届出が、委任後直ちに行われず、署名簿の提出後になされた。また、解職請求の要旨の記載や説明内容に事実と相違する点が含まれていた。上告人は、届出の遅滞が「成規の手続」違反にあたること、および説明の虚偽が「詐偽」にあたることを理由に、署名の無効を主張した。
あてはめ
1. 本件では、届出が署名簿提出後であったとしても、選管の審査開始前に行われ、審査自体は適正に完了している。この場合、届出規定の趣旨である審査の便宜は損なわれておらず、署名の効力を左右するほどの違法とはいえない。2. 選挙人が解職請求という目的を認識して署名している以上、説明内容に一部事実誤認があったとしても、目的を偽ったとはいえない。したがって、詐偽による署名とは認められない。
結論
1. 審査前に届出がなされた以上、届出遅延のみでは無効とはならない。2. 請求要旨等の事実相違は「詐偽」に該当せず、署名は有効である。
実務上の射程
直接請求制度における署名の有効性を判断する際の重要判例。手続的瑕疵については、審査の適正が確保される限りにおいて有効性を維持する柔軟な解釈を示す。また「詐偽」の意義を限定的に解し、政治的な主張内容の真偽が直ちに署名の効力を否定するものではないことを明らかにした点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…
事件番号: 昭和33(オ)878 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
地方自治法第七四条の二第八項の訴訟には行政事件訴訟特例法第二条の適用はない。
事件番号: 昭和28(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。 第1 事案の概要:上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提…
事件番号: 昭和33(オ)212 / 裁判年月日: 昭和33年6月10日 / 結論: 棄却
一 直接請求の署名簿の署名下に押された印影の内容が署名者の氏名と関連性を欠く場合でも、署名者が自己の印として使用する意思をもつてこれを押印したものであることが認められる以上、右署名は、押印のある有効な署名と解すべきである 二 地方自治法第七四条の二の規定による署名簿の署名に関する争訟は、個々の署名の効力の有無をその対象…