地方自治法第七四条の二第八項の訴訟には行政事件訴訟特例法第二条の適用はない。
地方自治法第七四条の二第八項の訴訟に行政事件訴訟特例法第二条の適用の有無。
地方自治法74条の2,行政事件訴訟特例法2条
判旨
地方自治法上の解職請求(リコール)において、その請求理由は法律上の制限がなく、内容の当否は有権者の政治的判断に委ねられるべきものであるから、裁判所が権利濫用を理由に署名の効力を否定することはできない。
問題の所在(論点)
地方自治法に基づく解職請求において、請求理由の内容を理由に、裁判所が権利の濫用として署名の効力を否定することができるか。
規範
地方自治法に基づく解職請求の理由については、法律上の制限は存在しない。当該請求に理由があるか否かは、選挙人が署名または投票に際して自ら判断すべき事柄であり、裁判所がその当否を審査し、権利の濫用として無効と判断すべき性質のものではない。
重要事実
上告人は、本件における解職請求(リコール)のための署名収集について、その請求内容が不当であり権利の濫用にあたるため、当該署名は無効であると主張した。また、一部の署名について委任状の不備や、行政事件訴訟特例法(当時)に基づく職権探知の欠如、判断遺脱などを理由に、署名の効力を争い上告した。
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…
あてはめ
解職請求制度は、住民の直接参政権を保障するものであり、その理由の適否は有権者の自由な意思決定(政治的判断)に委ねられている。したがって、請求理由に実質的な制限がない以上、たとえその内容が不当であると主張されたとしても、裁判所がその当否を判断の遡上に載せることはできない。本件における署名収集の手続についても、原審の証拠選択に違法はなく、また行政事件訴訟特例法による職権探知義務も及ばないため、権利濫用の主張は排斥されるべきである。
結論
解職請求の理由は法律上制限されず、その適否は選挙人の判断に委ねられるため、権利の濫用として無効になることはない。上告棄却。
実務上の射程
地方自治法上の直接請求(解職請求、条例制定改廃請求等)の理由の「政治性」を強調した判例である。答案上は、直接請求の要件が具備されている限り、内容の不当性を理由とする無効主張は認められないことを論述する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)738 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
一 直接請求の署名簿の署名捺印を求めることを請求代表者が第三者に委任した場合に、その委任が直ちに市町村選挙管理委員会に届け出られなくても、右委員会の署名の効力審査前にその届出があつたときは、右受任者の集めた署名が地方自治法第七四条の三第一項第一号に違反し無効であるということはできない。 二 地方自治法第七四条の三第二項…
事件番号: 昭和33(オ)212 / 裁判年月日: 昭和33年6月10日 / 結論: 棄却
一 直接請求の署名簿の署名下に押された印影の内容が署名者の氏名と関連性を欠く場合でも、署名者が自己の印として使用する意思をもつてこれを押印したものであることが認められる以上、右署名は、押印のある有効な署名と解すべきである 二 地方自治法第七四条の二の規定による署名簿の署名に関する争訟は、個々の署名の効力の有無をその対象…
事件番号: 昭和28(オ)1439 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
農業委員会の委員として在職中の者を請求代表者の一人に加えてしゆう集した村長および村会議員解職請求の署名は、たとえ右の者が直接署名のしゆう集に従事しなかつたとしても、すべて法令の定める成規の手続によらない署名として無効である。
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…