農業委員会の委員として在職中の者を請求代表者の一人に加えてしゆう集した村長および村会議員解職請求の署名は、たとえ右の者が直接署名のしゆう集に従事しなかつたとしても、すべて法令の定める成規の手続によらない署名として無効である。
農業委員会の委員として在職中の者を請求代表者の一人に加えてしゆう集した村長および村会議員解職請求の署名の効力
地方自治法81条,地方自治法80条,地方自治法74条の3第1項1号,地方自治法施行令116条の2,地方自治法施行令113条,地方自治法施行令109条,公職選挙法89条1項但書,公職選挙法89条2項,公職選挙法89条3項
判旨
公務員(村農業委員会委員)が解職請求代表者となった場合、その者が直接署名収集に従事したか否かを問わず、収集された署名はすべて無効である。選挙管理委員会が誤って資格証明書を付与したとしても、当該公務員が正当な代表者資格を取得することはない。
問題の所在(論点)
公務員(村農業委員会委員)が解職請求代表者に含まれる場合、収集された署名全体の効力はどうなるか。また、選挙管理委員会が誤って交付した資格証明書によって欠格事由が治癒されるか。
規範
地方自治法施行令等の規定により、公務員は解職請求代表者となることが禁止されている。この趣旨は、公務員がその地位を利用して署名収集に不当な影響を及ぼすことを防ぐ点にある。したがって、欠格事由のある者が代表者に含まれる場合、署名収集プロセス全体に影響を及ぼす可能性があるため、当該手続による署名はすべて成規の手続によらないものとして無効となる。また、行政機関による誤った資格証明書の付与は、実体法上の資格を創設するものではない。
重要事実
村農業委員会委員であるDが、村長および村議会議員の解職請求(リコール)の代表者の一人となり、署名簿への署名を求めた。当時の地方自治法施行令(116条の2、113条、109条)は、公職選挙法89条の規定を準用除外しており、公務員は代表者になれないと解されていた。しかし、選挙管理委員会は誤ってDに請求代表者の資格証明書を付与した。Dは代表者として名を連ねたが、必ずしもすべての署名を直接収集したわけではなかった。その後、この署名の効力が争われた。
事件番号: 平成21(行ヒ)83 / 裁判年月日: 平成21年11月18日 / 結論: 破棄自判
地方自治法施行令115条,113条,108条2項及び109条の各規定のうち,公職選挙法89条1項を準用することにより,公務員につき議員の解職請求代表者となることを禁止している部分は,その資格制限が解職の請求手続にまで及ぼされる限りで,同法中の選挙に関する規定を解職の投票に準用する地方自治法85条1項に基づく政令の定めと…
あてはめ
Dは村農業委員会委員であり、村の公務員に該当するため、解職請求代表者となる資格を欠く。Dが代表者の一人として名を連ねている以上、たとえ自ら直接署名収集に従事していなかったとしても、公務員の地位にある者が代表者であること自体が署名収集の過程に影響を及ぼす可能性を常に否定できない。法が公務員を排除する趣旨に鑑みれば、一部の代表者に欠格事由があるだけで、収集された署名は一律に法令の定める成規の手続によらない署名(地方自治法81条等)として無効と評価される。さらに、選挙管理委員会の証明書交付は誤りであり、これによって欠格者が代表者資格を取得すると解する余地はない。
結論
村農業委員会委員が代表者に含まれる解職請求に基づき収集された署名はすべて無効である。よって、上告は棄却される。
実務上の射程
地方自治法上の直接請求手続において、代表者の資格要件(欠格事由)が厳格に解されることを示した。代表者の一人にでも欠格者がいれば署名全体が無効となり得るという「不可分的な影響」を認めている点、および行政の誤信付与(公定力や信頼保護)が手続の適法性を直ちに救済しない点に実務上の射程がある。
事件番号: 昭和28(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。 第1 事案の概要:上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提…
事件番号: 昭和33(オ)878 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
地方自治法第七四条の二第八項の訴訟には行政事件訴訟特例法第二条の適用はない。
事件番号: 昭和28(オ)738 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
一 直接請求の署名簿の署名捺印を求めることを請求代表者が第三者に委任した場合に、その委任が直ちに市町村選挙管理委員会に届け出られなくても、右委員会の署名の効力審査前にその届出があつたときは、右受任者の集めた署名が地方自治法第七四条の三第一項第一号に違反し無効であるということはできない。 二 地方自治法第七四条の三第二項…
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…