地方自治法施行令115条,113条,108条2項及び109条の各規定のうち,公職選挙法89条1項を準用することにより,公務員につき議員の解職請求代表者となることを禁止している部分は,その資格制限が解職の請求手続にまで及ぼされる限りで,同法中の選挙に関する規定を解職の投票に準用する地方自治法85条1項に基づく政令の定めとして許される範囲を超え,無効である。 (補足意見及び反対意見がある。)
地方自治法施行令115条,113条,108条2項及び109条の各規定のうち,公職選挙法89条1項を準用することにより,公務員につき議員の解職請求代表者となることを禁止している部分は,地方自治法85条1項に基づく政令の定めとして効力を有するか
地方自治法80条1項,地方自治法80条3項,地方自治法85条1項,地方自治法施行令108条2項,地方自治法施行令109条,地方自治法施行令113条,地方自治法施行令115条,公職選挙法89条1項,公職選挙法施行令90条2項,公職選挙法施行令別表第2
判旨
地方自治法85条1項が準用する公職選挙法上の公務員の資格制限規定は、専ら「解職の投票」に関するものであり、その前段階である「解職の請求」手続には及ばない。したがって、農業委員会委員が解職請求代表者に含まれていることのみを理由に、署名簿の署名全体を無効とすることは許されない。
問題の所在(論点)
地方自治法85条1項が公職選挙法(公選法)を準用して公務員の資格制限を課す対象は、解職の「投票」手続のみか、それとも前段階の「請求」手続にも及ぶのか。また、本件各規定(地自令等)が請求手続における代表者の資格制限を定めている点は、法の委任の範囲内として有効か。
規範
地方自治法85条1項は、公職選挙法中の選挙に関する規定を「解職の投票」に準用すると定めている。この準用範囲は、文理上も実質的同質性(公の投票手続である点)からも、請求手続とは区分された「投票手続」に限られる。したがって、同項に基づき政令(地自令)で定めることができる事項も投票手続の範囲に限られ、請求手続における代表者の資格制限を課す規定は、委任の範囲を超え無効である。
事件番号: 昭和28(オ)1439 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
農業委員会の委員として在職中の者を請求代表者の一人に加えてしゆう集した村長および村会議員解職請求の署名は、たとえ右の者が直接署名のしゆう集に従事しなかつたとしても、すべて法令の定める成規の手続によらない署名として無効である。
重要事実
高知県東洋町の町議会議員の解職請求において、非常勤公務員である農業委員会委員が解職請求代表者の1人に含まれていた。町選挙管理委員会は、地自法85条1項およびこれを受けた地自令の規定(本件各規定)に基づき、公務員は解職請求代表者になれないとして、署名簿の署名1124名分をすべて無効とする決定を行った。
あてはめ
地自法は解職請求を「請求」と「投票」の二段階に区分している。85条1項が準用対象とするのは後者の「投票」のみである。請求手続は選挙権者が自ら投票手続を開始させる独自の手続であり、公選法に相当する制度がなく同質性も認められない。そのため、本件各規定が公選法89条1項(公務員の立候補制限)を読み替えて請求手続の代表者資格を制限している部分は、法85条1項の委任の範囲を超えて無効となる。ゆえに、農業委員会委員が代表者であることを理由とした署名の無効決定は、無効な規定に基づいたものといえる。
結論
農業委員会委員が解職請求代表者に含まれていても、署名簿の署名が無効となることはない。本件異議決定は違法であり、取り消されるべきである(昭和29年判例を変更)。
実務上の射程
直接請求制度における住民の参政権的権利の重要性を重視し、権利制限については法律の明文による明確な根拠を求める立場(厳格な文理解釈・委任の範囲の限定)を示す。答案上は、白紙委任や委任の範囲の逸脱が問題となる場面で、手続の性質の差異(投票vs請求)を根拠とする本判例のロジックが活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)878 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
地方自治法第七四条の二第八項の訴訟には行政事件訴訟特例法第二条の適用はない。
事件番号: 昭和28(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】市町村長解職請求の署名について、請求要旨に多少の事実相違があっても、選挙人が解職の意思を持って署名した以上は詐欺による無効とはならず、また選挙管理委員会の署名有効性の決定は裁判所の司法審査に服する。 第1 事案の概要:上告人(町選挙管理委員会)に対し、町長の解職(リコール)請求がなされ、署名簿が提…
事件番号: 昭和28(オ)18 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
一 地方公共団体の長の解職請求者名簿に部落民が部落会の決議により署名し、あるいは請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して署名を集めたからといつて、それだけでその署名が無効であるとはいえない。 二 署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかについての市町村選挙管理委員会の認定については、裁判所はその当否を判断するこ…
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…