村長解職賛否投票の効力に関する訴は、右村が吸収合併によつてなくなつた後においては、その利益がなくなつたものと解すべきである。
村が吸収合併によつてなくなつた後における村長解職賛否投票の効力に関する訴の利益。
地方自治法81条,地方自治法85条,公職選挙法203条
判旨
村長解職賛否投票の無効宣言を求める訴訟の係属中に、当該村が他市に吸収合併され廃止された場合、回復すべき地位が消滅するため訴えの利益は失われる。また、身分に伴う給料請求権等の個人的利益が存在しても、地位自体の回復が不能である以上、訴えの利益は認められない。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟において、処分の対象となった地位(村長職)が団体の廃止により消滅した場合に、当該地位に伴う付随的・金銭的利益の存在をもって、なお「法律上の利益」(訴えの利益)が認められるか。
規範
処分等の取消しや無効宣言を求める訴訟においては、当該処分を取り消すことによって回復すべき法律上の利益が存在することが必要である。本来の目的である地位の回復が、当該団体の消滅等により客観的に不能となった場合には、特段の事情がない限り、訴えの利益は消滅する。その際、当該地位に随伴する給料請求権等の個人的利益のみを理由として、既に消滅した地位の回復を求めることは許されない。
重要事実
村長であった上告人は、自身に対する解職請求の賛否投票について、管理委員会の構成が不当であるとして投票の無効宣言等を求めて提訴した。しかし、訴訟係属中に当該村が近隣市に吸収合併され、法律上廃止された。上告人は、勝訴すれば合併の効力にも影響し、かつ村長としての給料や旅費の請求権、不名誉の回復といった利益があると主張して、訴訟の継続を求めた。
事件番号: 昭和31(オ)557 / 裁判年月日: 昭和31年10月23日 / 結論: 棄却
村長不信任議決の無効確認を求める訴は、新村長が選挙せられその効力が確定した後は、その利益を失う。
あてはめ
本訴の目的は村長たる地位の回復にあるが、吸収合併により村自体が廃止された以上、上告人が回復すべき地位はもはや存在しない。上告人は、後任村長による合併処分の効力への影響を主張するが、賛否投票が仮に無効であっても、それまでになされた後任村長の行政処分(合併申請等)は当然には無効とならない。また、給料請求権等の個人的利益は村長たる地位に随伴して派生するものにすぎず、地位そのものの回復が不能となった以上、これらをもって訴えの利益を維持することはできない。
結論
村の廃止により回復すべき地位が消滅したため、本件訴訟は訴えの利益を欠き、却下を免れない。
実務上の射程
議員の除名処分に関する判例(最大判昭35・3・9)と同様、身分喪失後の訴えの利益を否定する枠組みを示すものである。現在の実務では、給料請求権等の金銭的利益が具体的に残存する場合には、なお「回復すべき法律上の利益」を認める傾向(最判昭45・4・2など)があるが、本判決はそれ以前の厳格な地位回復必要説に立つ事案として整理される。
事件番号: 昭和26(オ)123 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: その他
村長解職賛否投票の効力に関する訴訟係属中、村長の任期満了としたときは、訴の利益は失われる。
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…
事件番号: 昭和28(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の長の解職請求における署名の効力は、地方自治法が定める独立の争訟手続によってのみ争うことができ、解職投票の効力を争う訴訟において主張することはできない。また、解職投票において解職賛成が過半数に達し、その効力が確定した後は、署名の効力を争う訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上…