村長不信任議決の無効確認を求める訴は、新村長が選挙せられその効力が確定した後は、その利益を失う。
新村長の当選確定後における前村長不信任議決無効確認を求める訴の利益
民訴法第2編第1章訴(223条の前),行政事件訴訟特例法1条,地方自治法178条
判旨
不信任議決の無効確認を求める訴えは、新村長の就任により旧村長がその地位に復する余地がなくなった場合、法律上の利益を失い却下される。給料請求権の成否という目的があっても、地位の回復が不可能な以上、確認の利益は認められない。
問題の所在(論点)
村長に対する不信任議決の無効確認を求める訴訟において、新村長が就任し旧村長が地位を回復する法的可能性が消滅した場合、訴えの利益(法律上の利益)は失われるか。また、給料請求権の有無が当該地位の存否に依存する場合であっても、訴えの利益は否定されるか。
規範
行政処分等の無効確認を求める訴えにおいて、当該処分によって失われた地位の回復が客観的に不可能となった場合には、原則として当該訴えを提起・維持する法律上の利益(訴えの利益)は失われる。また、処分の無効を前提とする金銭的請求(給料請求等)が可能であっても、そのことのみをもって地位確認の訴えの利益が維持されるものではない。
重要事実
村議会による不信任議決を受け、村長の地位を失った上告人が、当該不信任議決の無効確認を求めて出訴した。しかし、訴訟の係属中に新村長を選出する選挙が実施され、新たな村長が当選・確定して就任した。上告人は、新村長の就任後も、旧村長としての地位の存否が給料請求権の成否に影響するとして、訴えの利益を主張した。
事件番号: 昭和33(オ)118 / 裁判年月日: 昭和35年12月7日 / 結論: 棄却
村長解職賛否投票の効力に関する訴は、右村が吸収合併によつてなくなつた後においては、その利益がなくなつたものと解すべきである。
あてはめ
まず、公職選挙法に基づく選挙により新村長が確定した以上、旧村長である上告人が村長の地位に復する余地はない。上告人が救済を受けるためには、不信任議決に対し執行停止を申し立てて選挙実施を阻止するか、新村長の選挙の効力を争うべきであったが、本件ではそれらがなされていない。次に、上告人は給料請求権との関係で確認の利益を主張するが、不信任議決無効確認の訴えは、現在村長たる地位にあることの確認を求める趣旨においてのみ許容されるものである。給料請求については別途民事訴訟等で争えば足り、地位確認の訴えを維持する必要性はない。したがって、本件訴えは法律上の利益を欠く。
結論
不信任議決の無効確認を求める請求は、新村長の当選・就任により法律上の利益を失い、不適法となる。
実務上の射程
処分後に行政客体が置かれた状況の変化により、処分の効力を争う実効性が失われた場合の「訴えの利益」の消滅に関するリーディングケースである。答案上は、地位の確認を求める訴えにおいて、公選職の任期満了や後任者の確定があった場合に、付随する金銭的利益のみでは訴えの利益を維持できないとする論証に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…
事件番号: 昭和26(オ)584 / 裁判年月日: 昭和29年2月11日 / 結論: 棄却
村議会の予算議決の無効確認を求める訴は不適法である。