一、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、抗告訴訟の対象となる行政処分である。 二、不当労働行為該当の瑕疵を有する現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、違法ではあるが、右瑕疵が重大かつ明白でないかぎり、当然無効ではない。 三、国家公務員法八九条一項所定の処分を受けた現業国家公務員は、直ちに右処分に対する取消訴訟を提起することができるが、右訴訟において不当労働行為該当の瑕疵以外の瑕疵を争うについては、審査請求に対する人事院の裁決を経由することを要する。 四、(省略)
一、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分の法的性質 二、不当労働行為に該当する現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分の効力 三、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分につき裁判による取消を求める方法 四、上告審が下級審の訴却下の判断を違法であると認めたにもかかわらず事件を下級審に差戻すことなく上告を棄却した事例
行政事件訴訟法3条2項,国家公務員法89条1項,国家公務員法92条の2,公共企業体等労働関係法40条1項1号,公共企業体等労働関係法40条3項,労働組合法7条,民訴法385条,民訴法388条,民訴法396条
判旨
不利益処分に不当労働行為該当の瑕疵がある場合、その瑕疵が重大かつ明白でない限り当然無効とはならず、行政不服申立てを経ていなくとも当該瑕疵を理由に処分の取消しを求めることができる。
問題の所在(論点)
不利益処分が不当労働行為に該当する場合の効力(当然無効か取消事由か)、および審査請求を経ていない瑕疵と審査請求を要しない瑕疵(不当労働行為該当性)が併存する場合における取消訴訟の適法性と審理の範囲が問題となる。
規範
不利益処分が不当労働行為に該当するとしても、その瑕疵が重大かつ明白でない限り、当該処分は当然無効ではなく取消事由にとどまる。また、一個の不利益処分に対する取消訴訟において、複数の違法事由のうち審査請求等が必要な瑕疵とそうでない瑕疵(不当労働行為等)が混在する場合、審査請求を経ていないことは訴訟全体の却下事由にはならない。この場合、前置手続を経た瑕疵または前置を要しない瑕疵に限り、実体審理の対象とすることができる。
重要事実
現業公務員である上告人らが、郵便局長から依願免職処分を受けた。上告人らは、当該処分が辞職願の撤回後になされたこと、および労働組合活動を理由とする不当労働行為に当たることを理由に、人事院に対する審査請求を経ることなく処分の取消訴訟を提起した。一審および原審は、訴願前置の要件(旧行政事件訴訟特例法2条)を欠く不適法な訴えであるとして、実体審理を行わず訴えを却下した。
あてはめ
本件免職処分において、不当労働行為該当の瑕疵は当然無効の原因とはならず、また辞職願撤回の有効性も明白とはいえないため、処分は当然無効ではない。次に、訴願前置との関係では、不当労働行為以外の瑕疵については審査請求を経ていない以上、その主張・審理は制限される。しかし、不当労働行為該当の瑕疵については、直ちに取消訴訟で争うことが可能であり、裁判所は訴えを却下せず、当該瑕疵の有無について実体判断を示すべきであった。したがって、訴えを却下した原審の判断は訴訟法上違法である。
結論
原判決の却下判断は違法であるが、実体審理の結果として不当労働行為には当たらないと認められる以上、請求棄却となるべきところ、不利益変更禁止の原則(民訴法396条、385条)により、上告を棄却する。
実務上の射程
一個の行政処分に複数の違法事由がある場合、訴願前置の有無が事由ごとに異なるとしても、訴え自体を却下することはできず、審理の対象を限定した上で適法に存続するという「審理要件」としての性質を明らかにした。答案上は、訴願前置の要件を満たさない事由が含まれる場合の処理や、不当労働行為を理由とする公務員処分の取消訴訟の可否を論じる際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。