一、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、抗告訴訟の対象となる行政処分である。 二、不当労働行為該当の瑕疵を有する現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、違法ではあるが、右瑕疵が重大かつ明白でないかぎり、当然無効ではない。 三、国家公務員法八九条一項所定の処分を受けた現業国家公務員は、直ちに右処分に対する取消訴訟を提起することができるが、右訴訟において不当労働行為該当の瑕疵以外の瑕疵を争うについては、審査請求に対する人事院の裁決を経由することを要する。
一、現業国家公務員に対する国公務員法八九条一項所定の処分の法的性質 二、不当労働行為に該当する現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分の効力 三、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分につき裁判による取消を求める方法
国家公務員法89条1項,国家公務員法92条の2,行政事件訴訟法3条2項,公共企業体等労働関係法40条1項1号,公共企業体等労働関係法40条3項,労働組合法7条
判旨
現業公務員に対する懲戒等の不利益処分は行政処分としての性質を有し、不当労働行為の瑕疵がある場合でも、原則として取消訴訟の対象となる。不当労働行為以外の瑕疵を主張・審理するには審査請求の裁決を経る必要があるが、不当労働行為の瑕疵を理由とする場合は直ちに出訴が可能である。
問題の所在(論点)
現業公務員に対する不利益処分において、不当労働行為の瑕疵を主張して処分の取消しを求める場合、国公法92条の2に定める審査請求前置(人事院の裁決)が必要か。また、同条の性質をいかに解すべきか。
規範
1. 現業公務員の勤務関係は基本的に公法上の関係であり、その不利益処分は行政処分にあたる。 2. 処分の瑕疵は、重大かつ明白でない限り当然無効とはならず、取消原因にとどまる。 3. 国公法92条の2の審査請求前置の規定は、取消訴訟自体の出訴要件ではなく、主張・審理の能否を画する制限として機能する。すなわち、不当労働行為以外の瑕疵については裁決を経る必要があるが、審査請求が許されない不当労働行為の瑕疵については、裁決を経ずとも直ちに出訴し、主張・審理の対象とすることができる。
事件番号: 令和3(行ヒ)164 / 裁判年月日: 令和4年6月14日 / 結論: 破棄差戻
地方公共団体の職員が、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分の停職期間中に、上記暴行等の一部についての事情を知っていた同僚及び上記暴行の被害者の1人である部下に対して行った各働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の(1)、(2)など判示の事情の下においては、上記処分が裁量権の範…
重要事実
現業公務員である被上告人らは、国家公務員法(以下「国公法」)82条に基づく懲戒停職処分を受けた。被上告人らは人事院への審査請求(国公法90条)を行わないまま、当該処分には不当労働行為に該当する瑕疵があるとして処分の取消訴訟を提起した。これに対し上告人(国)側は、審査請求に対する裁決を経ていないため国公法92条の2(審査請求前置主義)に基づき訴えは不適法であると主張した。
あてはめ
1. 処分は行政処分であり、瑕疵の態様によらず取消訴訟の対象となる。一個の処分に対し複数の訴訟を認めるのは訴訟関係を錯雑させるため、訴訟自体は一個であると解される。 2. 行政段階の救済手続において、不当労働行為の瑕疵は公共企業体等労働委員会が判断し、それ以外の瑕疵は人事院が判断する(公労法25条の5等)。 3. 国公法92条の2は「審査請求ができる場合」を前提とする。不当労働行為の瑕疵を理由とする審査請求は公労法40条3項により禁止されているため、同瑕疵を理由とする取消訴訟の提起自体を妨げる理由はない。よって、裁決を経ていないことは本件訴訟全体の却下事由にはならず、不当労働行為の瑕疵に関する主張・審理を認めるべきである。
結論
本件訴えは適法である。人事院の裁決を経ていないため不当労働行為以外の瑕疵の主張・審理は制限されるが、不当労働行為該当の瑕疵については実体審理を尽くすべきである。
実務上の射程
現業公務員の不利益処分に関する特殊な判示だが、審査請求前置の有無が「訴訟の適法性」だけでなく「主張・審理の範囲」を画定するという構成は、行政訴訟の審理構造を考える上で重要。現業公務員の労働紛争と行政処分の交錯場面で引用すべき判例である。
事件番号: 昭和49(行ツ)79 / 裁判年月日: 昭和53年11月14日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和44(行ツ)8 / 裁判年月日: 昭和49年12月10日 / 結論: その他
一、教育委員会法のもとにおいて、教育委員会が秘密会で免職処分の議決をした場合に、右秘密会で審議する旨の議決に公開違反の瑕疵があつたとしても、同委員会においては、従来から人事案件はすべて秘密会で審議しており、各委員がこれを了知したうえ全員一致で秘密会で審議する旨を議決したものであつて、その議決を公開の会議で行うことが議決…
事件番号: 平成9(行ツ)229 / 裁判年月日: 平成13年4月26日 / 結論: 棄却
市立中学校の教諭が,エックス線検査を行うことが相当でない身体状態ないし健康状態にあったなどの事情もうかがわれないのに,市教育委員会が実施した定期健康診断においてエックス線検査を受診しなかったなど判示の事実関係の下においては,校長が職務上の命令として発したエックス線検査受診命令は適法であり,上記教諭がこれに従わなかったこ…