国家公務員に対する懲戒処分について人事院が修正裁決をした場合には、右処分は、消滅するのではなく、当初から右裁決により修正された内容の懲戒処分として存在していたものとみなされる。
国家公務員に対する懲戒処分につき修正裁決があつた場合と右処分の帰すう
国家公務員法82条,国家公務員法92条1項,国家公務員法92条の2,行政事件訴訟法10条2項,行政事件訴訟法11条1項
判旨
人事院の修正裁決により懲戒処分が軽減された場合、原処分は一体として消滅するのではなく、当初から修正後の内容で存在していたものとみなされる。したがって、被処分者は修正後の処分の取消しを求める訴えの利益を失わない。
問題の所在(論点)
懲戒処分に対し、人事院が処分の内容を軽減する修正裁決を行った場合、原処分は消滅するのか。また、被処分者は修正後の処分について取消訴訟を提起する訴えの利益を有するか(行政事件訴訟法9条1項)。
規範
国家公務員法92条1項にいう処分の「修正」とは、処分権者の懲戒権発動そのものを承認した上で、処分の法律効果の内容(種類・量定)を一定限度に変更することを指す。修正裁決がなされた場合、原処分は一体として消滅して新たな処分が形成されるのではなく、当初から修正後の法律効果を伴う処分として存在していたものとみなされる。
重要事実
郵政事務官であった上告人が、停職6か月の懲戒処分(原処分)を受けた。人事院への審査請求の結果、原処分を「6か月間、俸給月額10分の1の減給」に軽減する修正裁決がなされた。上告人は、なお処分事由の不存在を主張して修正後の処分の取消しを求めたが、原審は修正裁決により原処分は一体として消滅したとして、訴えの利益を欠き不適法であると判断した。
あてはめ
本件修正裁決は、被上告人による懲戒権の発動(原処分の意思決定)を前提とし、その内容を停職から減給へと軽減したにすぎない。国公法上の「修正」の性質に照らせば、本件懲戒処分は当初から減給処分として存在していたものとみなされる。そうすると、軽減されたとはいえ、被上告人の懲戒権発動に基づく処分は依然として存続している。したがって、上告人が処分事由の不存在等を理由に処分の取消しを求めることは、法的利益のある正当な権利行使といえる。
結論
修正裁決により原処分が消滅したとはいえず、上告人は修正後の処分の取消しを求める訴えの利益を失わない。
実務上の射程
裁決によって原処分が修正された場合に、行政事件訴訟法10条2項(裁決の固有の適法性)との関係で「訴えの対象」を特定する際に用いる。実務上は、修正後の原処分を対象として取消訴訟を維持できることを肯定する根拠となる。
事件番号: 昭和49(行ツ)79 / 裁判年月日: 昭和53年11月14日 / 結論: 棄却
(省略)