業務停止処分を受けた弁護士は、業務停止の期間を経過したのちにおいても、右処分を受けたことにより日本弁護士連合会会長の被選挙権を有しない場合には、右処分にかかる裁決の取消しを求める訴えの利益を有する。
業務停止処分を受けた弁護士がその期間経過後において右処分を受けたことにより日本弁護士連合会会長の被選挙権を有しない場合と右処分にかかる裁決の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条,弁護士法57条
判旨
業務停止処分の期間が経過した後であっても、弁護士会の会長選挙規程により当該処分を受けたことが被選挙権の欠格事由とされている場合には、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が認められる。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」の有無が問題となる。特に、処分の執行が終了しその期間が経過した後に、団体内部の規定により資格制限等の不利益を受ける場合、当該処分の取消しを求める訴えの利益が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条にいう「法律上の利益」は、処分期間の経過等により処分の効力が消滅した後であっても、当該処分を受けたことを理由として、法令上の規定や団体内部の効力ある規定等に基づき、不利益な取り扱いを受けるおそれがある場合には、当該不利益を解消すべく例外的に肯定される。
重要事実
弁護士である上告人は、業務停止処分を受けたが、その停止期間は既に経過していた。しかし、所属する弁護士連合会の会長選挙規程には、弁護士法に基づく処分を受けた者は不服申立不可となった日から3年を経過するまで被選挙権を有しない旨の定め(14条)が存在した。上告人は弁護士登録10年以上の要件(13条)を満たす可能性があったが、原審は処分を理由に不利益に扱う法令の規定がないとして、訴えの利益を否定した。
あてはめ
本件では、業務停止期間自体は経過しているものの、連合会の会長選挙規程14条により、処分の存在が被選挙権の欠格事由として機能している。上告人が同規程13条の登録年数要件(10年以上)を満たしているならば、本件業務停止処分が存在すること自体によって、将来の会長選挙における被選挙権を奪われるという具体的な不利益を受けている状態にあるといえる。したがって、処分の取消しによってこの不利益な状態(欠格事由)を解消することができるため、法律上の利益の回復が認められる余地がある。
結論
上告人は、会長選挙の被選挙権に関する資格要件を満たしている限り、業務停止期間経過後であっても、なお本件裁決の取消しを求める「法律上の利益」を有する。原判決を破棄し、差戻す。
実務上の射程
処分が終了しても「不利益な取り扱いを認めた規定」がある場合には訴えの利益が維持されるという法理(行訴法9条1項後段の解釈)の典型例。本件のように私的な団体内部の規定(会規等)であっても、それが処分と結びついて不利益を課すものであれば「法律上の利益」の根拠となり得る点に注意が必要である。答案では、期間経過後の訴えの利益を検討する際、関連規定の有無を確認し、その規定に基づく不利益が処分の取消しによって除去可能かを論じる際の準拠枠組みとなる。
事件番号: 昭和53(行ツ)170 / 裁判年月日: 昭和55年1月25日 / 結論: 棄却
いわゆる「法律生活上の利益」は行政事件訴訟法九条括弧書にいう「処分の取消しによつて回復すべき法律上の利益」にあたらない。
事件番号: 昭和53(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和55年11月25日 / 結論: 破棄自判
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で一年を経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。