自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で一年を経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。
自動車運転免許効力停止処分後無違反・無処分で一年を経過した場合と右処分の取消を求める訴の利益
行政事件訴訟法9条,道路交通法103条2項,道路交通法施行令38条1項2号
判旨
自動車運転免許停止処分の効力期間が経過し、かつ処分後1年の無違反・無処分期間の経過により不利益を受ける法的おそれが消滅した後は、当該処分の取消しを求める「法律上の利益」は失われる。
問題の所在(論点)
運転免許停止処分の効力期間が終了し、かつ法令上の不利益を受けるおそれがなくなった後において、名誉や感情、信用を損なう可能性を排除することが、行政事件訴訟法9条の「法律上の利益」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法9条に規定する「法律上の利益」とは、当該処分によって侵害された法的権利または利益が、処分の取消しによって回復される余地があることを要する。処分の効力期間が経過した後であっても、法令上の規定に基づき、当該処分を理由として将来不利益な取り扱いを受けるおそれがある場合には回復すべき利益が認められるが、名誉、感情、信用等の毀損といった「事実上の効果」にすぎないものは、同条の利益には含まれない。
重要事実
被上告人は、福井県警察本部長から30日間の運転免許停止処分を受けたが、即日29日間の短縮措置を受けたため、実質的な効力は1日で終了した。その後、被上告人は1年間無違反・無処分で経過した。これにより、道路交通法上の累進的な不利益を受けるおそれ(前歴としての不利益)は消失したが、被上告人は本件処分の取消しを求めて訴えを提起した。
事件番号: 昭和39(行ツ)44 / 裁判年月日: 昭和40年8月2日 / 結論: 棄却
自動車等運転免許の取消処分の取消を求める訴訟の継続中、当該運転免許証の有効期間が経過した場合でも、その訴は利益を失われない。
あてはめ
本件において、停止処分の効力は既に1日の経過により失われており、1年間の無違反期間を経過したことで将来的に不利益な処分を受ける法的根拠も消滅している。原審が指摘する「免許証への記載による名誉や信用の毀損」という可能性は、処分の法的効果ではなく、付随的な事実にすぎない。したがって、処分の取消しによって回復すべき具体的な法的利益は存在しないというべきである。
結論
被上告人は本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しないため、本件訴えは却下されるべきである。
実務上の射程
処分の期間経過後の訴えの利益に関するリーディングケースである。特に「事実上の不利益」と「法的利益」を峻別する基準として重要。試験答案では、法令上の不利益が残っている場合(例えば運転免許の点数加算が残っている場合)には、本判決の射程外として「訴えの利益」を肯定する論理を展開することになる。
事件番号: 昭和53(行ツ)170 / 裁判年月日: 昭和55年1月25日 / 結論: 棄却
いわゆる「法律生活上の利益」は行政事件訴訟法九条括弧書にいう「処分の取消しによつて回復すべき法律上の利益」にあたらない。
事件番号: 昭和28(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁による運転免許取消処分が裁量権の範囲を逸脱したとは認められず、また憲法25条は国家の責務を宣言する趣旨であって、個人の現実的な生活権を直接保障するものではない。 第1 事案の概要:上告人は、B県公安委員会から受けた運転免許取消処分について、当該処分が生存権を侵害し違法であると主張して争った。…