自動車等運転免許の取消処分の取消を求める訴訟の継続中、当該運転免許証の有効期間が経過した場合でも、その訴は利益を失われない。
自動車等運転免許証の有効期間の経過と右運転免許取消処分の取消訴訟における訴の利益の存否。
道路交通法101条,道路交通法105条,行政事件訴訟法9条
判旨
運転免許取消処分の取消訴訟中に免許証の有効期間が経過しても、処分が違法で取り消されるべきものである限り、適性検査の時期は取消確定時に到来するものと解すべきであり、訴えの利益は消滅しない。また、別種の運転免許を後日取得したとしても、当初の免許とは別個の権利であるため、依然として取消しを求める法的利益は存続する。
問題の所在(論点)
行政処分の効力が争われている間に、法令上の期間経過や状況変化が生じた場合の「訴えの利益」(行政事件訴訟法9条1項)の有無が問題となる。具体的には、①免許更新手続をとらずに有効期間が経過した場合に免許は当然に失効し訴えの利益が失われるか、②別種の免許を取得した場合に当初の免許の取消しを求める利益が失われるか。
規範
道路交通法上の免許更新規定は、現に免許を行使し得る者に対して定期検査を課す趣旨であり、免許取消処分の適否が争われている場合にまで期間満了による当然の失効を予定したものではない。したがって、取消処分の取消しが確定して免許を行使しうる状態に復帰した際に適性検査の時期が到来するものと取り扱うのが相当である。また、現に有する免許と別種の免許を併有することは同法上妨げられないため、別種の免許取得は訴えの利益を左右しない。
重要事実
被上告人は大型第二種・三輪第二種の運転免許を有していたが、酩酊運転を理由に免許取消処分を受けた。被上告人はその取消しを求めて提訴したが、訴訟継続中に免許証の有効期間が満了した。上告人(行政側)は、期間満了による更新がない以上免許は失効しており訴えの利益が消滅したこと、および被上告人が既に別種の免許(第一種・第二種普通免許)を取得してタクシー運転手として稼働可能であることから訴えの利益を欠くと主張した。
事件番号: 昭和37(オ)49 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 破棄自判
タクシーの運転手が転回禁止区域における転回という、それ自体では免許停止処分の事由に該当するにすぎない違反行為をした場合であつても、公安委員会が、右違反行為はさきの免許停止処分の期間満了の日から起算して一年以内になされたものであり、しかも右運転手には違反歴がある等判示のような事情を勘案し、同運転手に対してした免許取消処分…
あてはめ
①について、被上告人が更新手続をとれなかったのは違法な取消処分の効力が存続していたためであり、行政側の違法処分に起因する。道交法101条等の更新規定は係争中の者に適用を強制するものではなく、取消確定時に適性検査を受ければ足りると解されるため、期間経過は訴えの利益に影響しない。②について、本件処分の対象は大型第二種・三輪第二種免許であり、新たに取得した普通免許とは別種である。道交法上、別種の免許の併有は認められている(88条2項参照)以上、新免許の取得によって旧免許の回復を求める利益が代替されるものではない。
結論
有効期間の経過や別種免許の取得によっても、本件免許取消処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
実務上の射程
処分によって権利行使が不可能な状態にある中で、期間満了等の形式的要件の不成就が生じても、処分の違法性が解消されれば権利が回復し得るとの判断を示した。司法試験においては、訴えの利益の検討に際し「回復すべき法的利益」の有無を判断する重要な指標となる。特に更新制のある認可・免許制度において、処分によって更新機会を奪われた原告を救済する法理として活用できる。
事件番号: 昭和53(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和55年11月25日 / 結論: 破棄自判
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で一年を経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和47(行ツ)100 / 裁判年月日: 昭和51年3月23日 / 結論: 棄却
道路交通法施行令(昭和四三年政令第二九八号による改正前のもの)三八条一号ニ、同条二号ハにいう「違反行為」とは、故意によるか過失によるかを問わないものと解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁による運転免許取消処分が裁量権の範囲を逸脱したとは認められず、また憲法25条は国家の責務を宣言する趣旨であって、個人の現実的な生活権を直接保障するものではない。 第1 事案の概要:上告人は、B県公安委員会から受けた運転免許取消処分について、当該処分が生存権を侵害し違法であると主張して争った。…