医業停止処分を受けた者は、当該停止期間が経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。
医業停止処分後停止期間が経過した場合と右処分の取消を求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条
判旨
期間の経過により医業停止処分の効力が消滅した後は、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益は認められない。
問題の所在(論点)
医業停止処分の期間が満了した後において、当該処分の取消しを求める「回復すべき法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項括弧書)が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項括弧書にいう「処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益」とは、処分の効力が消滅した後においても、当該処分を取り消すことによって解消されるべき法的不利益が存する場合を指す。処分の性質上、その期間の経過によって処分の拘束力が完全に消滅し、将来の不利益を防止する法的効力も認められない場合には、訴えの利益は失われる。
重要事実
医師である上告人が、行政庁から一定期間の医業停止処分を受けた。上告人は当該処分の取消しを求めて提訴したが、訴訟継続中に処分において定められた停止期間が満了し、処分の効力が期間経過により終了した。
あてはめ
本件医業停止処分は、一定期間医師としての業務を禁止するものである。期間が満了したことにより、上告人は再び医業に従事することが可能となっており、処分の直接的な拘束力は消滅している。また、当該処分の存在が将来の更なる不利益(例えば、免許取消事由の累積や加重処分の要件等)に直結するといった法的地位の侵害をもたらす事情が認められない限り、取消しによって回復すべき具体的な法的利益は存在しないといえる(判決文からは付随する法的不利益の詳細は不明だが、原審の判断を是認している)。
結論
本件医業停止処分について、上告人は取消しによって回復すべき法律上の利益を有しない。
実務上の射程
行政処分が期間満了や執行完了により消滅した場合における「訴えの利益」の有無に関する基本判例である。答案上は、行訴法9条1項括弧書の解釈として、処分消滅後の付随的利益(加重処分の規定がある場合等)の有無を検討する際の前提として引用する。
事件番号: 昭和53(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和55年11月25日 / 結論: 破棄自判
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で一年を経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和61(行ツ)90 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
産婦人科医院を開設している医師が、時期を逸しながら人工妊娠中絶の施術を求める女性にこれを断念させる方法として、当該女性に出産させた新生児を内容虚偽の出生証明書を発行してその養育を希望する者にあつせんするいわゆる実子あつせんを始め、二〇年間にわたり、産婦人科医師の団体等の批判、中止勧告をも無視して約二二〇件これを行い、そ…