社会保険医療担当者監査要綱に基づき都道府県知事が保険医に対してなした戒告の措置は、行政事件訴訟特例法第一条にいう行政庁の処分にあたらない。
社会保険医療担当者監査要綱に基づき都道府県知事が保険医に対してなした戒告の措置は、行政事件訴訟特例法第一条にいう行政庁の処分にあたるか。
社会保険医療担当者監査要綱(昭和28年6月10日保発46号厚生省保険局長の都道府県知事あて通達),行政事件訴訟特例法1条
判旨
保険医に対する戒告は、行政上の指導監督措置にすぎず、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する法的効果を有しないため、取消訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
問題の所在(論点)
社会保険医療担当者監査要綱に基づく保険医への「戒告」が、行政事件訴訟法上の処分性を有するか。
規範
取消訴訟の対象となる「行政処分」とは、行政庁の行為のうち、その行為自体によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。法的効果を伴わない勧告、指導、または事実上の名誉・信用の毀損にとどまる行為は、処分性を欠く。
重要事実
保険医である被上告人は、都道府県知事から「社会保険医療担当者監査要綱」に基づき、不適切な診療等を理由として「戒告」の措置を受けた。当該要綱上、監査後の措置には指定取消、戒告、注意指導がある。被上告人は、この戒告が名誉を毀損し、将来の指定取消につながる不利益な処分であるとして、その取消しを求めて提訴した。
あてはめ
まず、健康保険法等の規定において、本件戒告に直接の法的効果を認める規定は存在しない。次に、戒告を受けたことで将来指定取消を受ける蓋然性が高まるとしても、それは戒告事由となる事実が重なることによる事実上の不利益にすぎず、戒告という措置自体が指定取消の要件となるような直接の法的関係はない。さらに、名誉や信用の毀損といった事実上の影響は生じうるが、それ自体は国民の権利義務を直接制限する法的効果とはいえない。
結論
本件戒告は法的効果を欠く行政上の措置であり、取消訴訟の対象たる行政処分に当たらない。したがって、本件訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
行政指導や事実行為の処分性を否定する際のリーディングケース。将来の不利益が事実上の可能性にとどまる場合や、名誉毀損等の事実上の不利益が生じるにすぎない場合には処分性を認めないという、厳格な法的効果説の立場を答案上示す際に活用する。
事件番号: 昭和35(オ)490 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が運転免許の停止処分を行う際、その理由が過失による交通事故および報告義務違反等の複数の法令違反に基づくものであるならば、当該処分は処分基準(総理府令)に抵触せず、適法である。 第1 事案の概要:上告人は、自動車の運転中に過失により交通事故を起こし、他人に傷害を与えた。また、事故発生後にその内…