いわゆる「法律生活上の利益」は行政事件訴訟法九条括弧書にいう「処分の取消しによつて回復すべき法律上の利益」にあたらない。
いわゆる「法律生活上の利益」と行政事件訴訟法九条括弧書にいう「法律上の利益」
行政事件訴訟法9条
判旨
行政事件訴訟法9条1項括弧書きにいう「処分の取消しによつて回復すべき法律上の利益」とは、処分が取り消されることによって解消されるべき具体的な法的権利を指し、国家賠償請求によって救済されるべき金銭的利益等はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
処分の効力が消滅した後に、損害賠償請求等によって補填され得る利益がある場合に、行政事件訴訟法9条1項括弧書きにいう「処分の取消しによつて回復すべき法律上の利益(狭義の訴えの利益)」が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項括弧書きの「処分の取消しによつて回復すべき法律上の利益」が認められるためには、処分の効果が消滅した後であっても、処分の取消しという判決によって直接的に回復可能な法的権利または利益が存していなければならない。単なる事実上の利益や、他の中立的な手段(国家賠償請求等)によって実現されるべき経済的利益は、この「法律上の利益」には該当しない。
重要事実
上告人は行政処分を受けたが、当該処分の効力は既に期間経過等により消滅していた。上告人は、当該処分の取消しによって回復すべき「法律生活上の利益」があると主張して、処分の取消訴訟を提起した。しかし、上告人が主張する利益は、実質的には国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟等を通じて実現されるべき性質のものであった。
事件番号: 昭和53(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和55年11月25日 / 結論: 破棄自判
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で一年を経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。
あてはめ
上告人が主張する「法律生活上の利益」は、処分の取消判決そのものによって回復されるべき性質のものではなく、国家賠償法上の損害賠償請求訴訟によって直截的かつ有効に実現を図るべきものである。したがって、処分の取消しを求める訴えによって回復可能な「法律上の利益」を構成するものとはいえない。処分の取消しという手段が、当該利益の回復にとって適当かつ直接的な解決策ではない以上、訴えの利益は認められないと評価される。
結論
上告人の主張する利益は行訴法9条括弧書きの「法律上の利益」にはあたらず、本件訴えは訴えの利益を欠き不適法である。
実務上の射程
処分の効力消滅後の訴えの利益に関するリーディングケースの一つ。答案上は、処分の執行完了後等に「金銭賠償で足りる」とされる場合に、訴えの利益(狭義の訴えの利益)を否定する根拠として用いる。ただし、名誉回復や後の加重処分を避けるための法的利益がある場合には例外的に認められ得る点に注意が必要である。
事件番号: 昭和37(オ)25 / 裁判年月日: 昭和37年9月18日 / 結論: 棄却
判決に当事者の主張の採用すべきものであるか否かに関する裁判所の意見がその理由とともに表明されている以上、それが正当であると否とに拘りなく、民訴法第四二〇条第一項九号所定の判断遺脱があるとはいえない。
事件番号: 昭和28(オ)375 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
買収農地の売渡に際し、買収の時期において右土地の転借人としてこれを耕作していた甲が売渡手続の存在を知らなかつたため買受の申込をせず、転貸人乙が耕作者として買受の申込をしたため乙を相手方として売渡処分が行われた結果、乙は右土地の所有権を取得し、甲の耕作権は一旦消滅したが、爾後も乙は自ら右土地を耕作せず引き続き甲にこれを耕…