市立中学校の教諭が,エックス線検査を行うことが相当でない身体状態ないし健康状態にあったなどの事情もうかがわれないのに,市教育委員会が実施した定期健康診断においてエックス線検査を受診しなかったなど判示の事実関係の下においては,校長が職務上の命令として発したエックス線検査受診命令は適法であり,上記教諭がこれに従わなかったことは,地方公務員法(平成11年法律第107号による改正前のもの)29条1項1号,2号に該当する。
市教育委員会実施の定期健康診断においてエックス線検査を受診しなかった市立中学校の教諭が校長の受診命令に従わなかったことが地方公務員法(平成11年法律第107号による改正前のもの)29条1項1号,2号に該当するとされた事例
学校保健法8条1項,学校保健法10条1項,学校保健法施行規則(平成2年文部省令第1号による改正前のもの)10条1項3号,学校保健法施行規則(平成2年文部省令第1号による改正前のもの)11条2項,結核予防法4条1項,結核予防法6条,結核予防法7条1項,結核予防法施行令(平成4年政令第359号による改正前のもの)2条1項9号,結核予防法施行令(平成4年政令第359号による改正前のもの)2条2項2号,結核予防法施行規則(平成4年厚生省令第66号による改正前のもの)3条5号,労働安全衛生法66条5項,労働安全衛生規則(平成元年労働省令第22号による改正前のもの)44条1項4号,地方公務員法(平成11年法律第107号による改正前のもの)29条1項1号,地方公務員法(平成11年法律第107号による改正前のもの)29条1項2号
判旨
校長によるエックス線検査受診命令は、教職員の健康が児童生徒に与える影響や、学校における集団感染の防止という公共の福祉の観点から適法な職務命令であり、正当な理由なくこれに従わないことは懲戒事由に該当する。
問題の所在(論点)
校長が教職員に対して行うエックス線検査の受診命令が、地方公務員法上の適法な「職務上の命令」にあたるか。また、これに違反することが懲戒事由を構成するか。
規範
市町村立中学校の校長は、所属する教員に対し、職務上の命令として、結核の有無に関するエックス線検査を受診することを命ずることができる。この受診命令は、労働安全衛生法66条5項や結核予防法7条1項等の規定に基づく法的義務を背景とし、教職員個人の保護に加え、学校内での集団防衛という公共の福祉の目的を併せ持つ。したがって、特段の事情がない限り、適法な職務命令としての拘束力を有する。
事件番号: 平成9(行ツ)229 / 裁判年月日: 平成13年4月26日
【結論(判旨の要点)】校長が教諭に対し、学校保健法等に基づき結核の有無に関するエックス線検査の受診を命ずることは、職務上の命令として適法である。教諭が正当な理由なくこれを拒否した場合は、地方公務員法上の懲戒事由に該当する。 第1 事案の概要:公立中学校の教諭である上告人は、過去の放射線暴露を理由に、校長が命じた定期健康…
重要事実
中学校教諭である上告人は、市教育委員会が実施した昭和58年度定期健康診断におけるエックス線検査について、過去の被ばく経験からさらなる暴露を避けたいとして受診を拒否した。校長は複数回にわたり受診を命じたが、上告人はこれに従わなかった。上告人は別途「かくたん検査」等を受け異常なしとの報告をしたが、信頼性の高いエックス線検査の代わりにはならないものであった。また、本件検査による被ばく量は0.03ミリシーベルト程度と極めて低く、健康被害は考慮不要なレベルであった。
あてはめ
まず、エックス線検査は、教職員の保健能率増進のみならず、生徒への影響や学校集団の防衛という公共的見地から実施される。本件において、上告人が主張する被ばくの懸念は、当時の国際的な線量当量限度と比較して極めて低レベル(0.03ミリシーベルト)な検査であることに照らせば、健康上の正当な拒絶理由とはいえない。また、代替手段として提示されたかくたん検査は信頼性が低く、エックス線検査の代替とは認められない。さらに、上告人が当時受診を不適当とする身体状態にあった等の事情もうかがわれない。したがって、本件受診命令は適法な職務命令といえる。
結論
校長によるエックス線検査受診命令は適法であり、上告人がこれに従わなかったことは、地方公務員法29条1項1号(法令違反)および2号(職務上の義務違反)の懲戒事由に該当する。
実務上の射程
公務員に対する健康診断受診命令の適法性を肯定した重要判例である。答案上は、職務命令の限界が問われる場面において、(1)命令の根拠法令の有無、(2)実施目的(公共の利益や集団防衛)、(3)命令による不利益(身体への侵襲性)の程度を相関的に考慮する際の規範として活用できる。
事件番号: 平成23(行ツ)263等 / 裁判年月日: 平成24年1月16日 / 結論: その他
1 公立の高等学校又は養護学校の教職員が,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又は国歌のピアノ伴奏を行うことを命ずる旨の校長の職務命令に従わず起立しなかったこと又は伴奏を拒否したことを理由に,教育委員会から戒告処分を受けた場合において,上記不起立又は伴奏拒否が当該教職員の歴史観ないし世…
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…
事件番号: 令和3(行ヒ)164 / 裁判年月日: 令和4年6月14日 / 結論: 破棄差戻
地方公共団体の職員が、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分の停職期間中に、上記暴行等の一部についての事情を知っていた同僚及び上記暴行の被害者の1人である部下に対して行った各働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の(1)、(2)など判示の事情の下においては、上記処分が裁量権の範…
事件番号: 令和6(行ヒ)214 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動を理由として停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の分…