一、教育委員会法のもとにおいて、教育委員会が秘密会で免職処分の議決をした場合に、右秘密会で審議する旨の議決に公開違反の瑕疵があつたとしても、同委員会においては、従来から人事案件はすべて秘密会で審議しており、各委員がこれを了知したうえ全員一致で秘密会で審議する旨を議決したものであつて、その議決を公開の会議で行うことが議決の公正確保のために実質的にさして重要な意義を有せず、また、その議決は、一部関係者だけが傍聴できない状況のもとで行われた点において公開違反があるにとどまり、全く秘密裡にされたものであるとはいえないなど判示のような事情があるときは、右公開違反の瑕疵は、実質的に公開制度の趣旨目的に反するというに値しないほど軽微なものとして、免職処分の議決を取り消すべき事由にはあたらないものと解するのが相当である。 二、免職された公務員が免職処分の取消訴訟の係属中に死亡した場合には、その取消判決によつて回復される当該公務員の給料請求権等を相続する者が右訴訟を承継する。
一、教育委員会沫のもとにおいて教育委員会の会議の公開違反の瑕疵がその議決の取消事由にあたらないとされた事例 二、免職された公務員が免職処分の取消訴訟の係属中に死亡した場合と相続人による訴訟承継の成否
教育委員会法(昭和23年法律第170号)37条,民訴法208条,行政事件訴訟法9条
判旨
教育委員会の会議公開原則に違反した手続上の瑕疵があっても、違反の程度・態様が公開原則の趣旨目的に反しないほど軽微であれば、処分の取消事由にはならない。また、免職処分取消訴訟の原告が死亡した場合、処分取消により回復される給料請求権等が相続対象である限り、相続人による訴訟承継が認められる。
問題の所在(論点)
1. 教育委員会の会議公開原則に違反する手続的瑕疵がある場合、その議決に基づく免職処分は取り消されるべきか。 2. 免職処分の取消訴訟において、原告が死亡した場合、給料請求権等の回復を目的として相続人が訴訟を承継できるか。
規範
1. 会議の公開原則(旧教育委員会法37条)違反の瑕疵が処分の議決の効力に影響を及ぼすかは、具体的事案における違反の程度及び態様が、当該議案の議事手続全体との関係からみて、実質的に公開原則の趣旨目的(公正な運営の確保、住民の監視・批判等)に反するといえないほど軽微であるか否かによって判断する。 2. 処分取消訴訟の係属中に原告が死亡した場合、処分の取消しによって遡及的に回復される給料請求権等の権利が相続の対象となる性質のものであれば、当該権利の回復は取消訴訟の実質的目的をなす「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条)に含まれるため、相続人による訴訟承継が認められる。
事件番号: 令和4(行ヒ)319 / 裁判年月日: 令和6年6月27日 / 結論: 破棄自判
飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けて地方公共団体の職員を退職した者が、大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和元年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、同処分が…
重要事実
教育委員会が教員らを免職処分とする際、旧教育委員会法に反し、会議を公開せずに非公開のまま開会し、開会直後に秘密会とする議決を行った。また、訴訟継続中に原告の一人が死亡したため、その相続人が訴訟承継を申し立てたが、原審は取消訴訟の追行権は一身専属的であるとしてこれを認めなかった。
あてはめ
1. 本件では人事案件を秘密会で審議する議決自体は予定されたものであり、公開の会議で行う実質的意義は乏しかった。また、特定の関係者のみが傍聴できない状況での開会にとどまり、全くの秘密裡になされたわけではない。したがって、公開違反の程度は実質的に公開原則の趣旨に反しないほど軽微であり、取消事由にはあたらない。 2. 免職処分の取消しにより回復される給料請求権等は、単なる反射的効果ではなく取消訴訟の「法律上の利益」そのものであり、相続可能な権利である。将来の公務員としての地位回復が不可能になっても、過去の給料請求権等の回復のために取消しを求める利益は存続するため、相続人による承継が認められる。
結論
1. 会議公開の瑕疵は軽微であり、免職処分の議決を違法とするものではない。 2. 免職処分取消訴訟において、相続人による訴訟承継は認められる。
実務上の射程
手続的瑕疵の違法性判断において「実質的な趣旨への反抗度」を重視する枠組みを示す。また、行訴法9条の「法律上の利益」について、処分の直接の効果(身分の回復)以外に、それに付随する財産的利益(給料請求権)も含むとした重要判例であり、訴訟承継の可否を論じる際の標準的な規範となる。
事件番号: 昭和47(行ツ)89 / 裁判年月日: 昭和49年12月17日 / 結論: 棄却
一、条件附採用期間中の国家公務員は、人事院規則一一‐四第九条所定の事由に該当しないかぎり分限されない保障を有する。 二、人事院規則一一‐四第九条に基づく条件附採用期間中の国家公務員に帰する分限処分は、任命権者の純然たる自由裁量ではなく、その判断が合理性をもつものとして許容される限度をこえたときは、違法となる。
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。