宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が依頼を受け,他人の郵便受けの投入口から不在連絡票を取り出すという著しく不自然な方法を用いて,送付先のマンションに設置された宅配ボックスから荷物を取り出した上,これを回収役に引き渡すなどしていること,他に詐欺の可能性の認識を排除するような事情も見当たらないことなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,詐欺の故意に欠けるところはなく,共犯者らとの共謀も認められる。
詐欺の被害者が送付した荷物を依頼を受けて送付先のマンションに設置された宅配ボックスから取り出して受領するなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例
刑法60条,刑法246条1項
判旨
特殊詐欺の「受け子」の故意は、不自然な荷物の受領方法や、居住実態のない名宛人の存在、事後の他事件における認識等の諸事情を総合して、未必的な認識と認めることができる。
問題の所在(論点)
特殊詐欺において、指示役から荷物の受取を依頼された「受け子」に、自己の行為が詐欺の一環であることの認識(詐欺の故意)および共謀が認められるか。
規範
詐欺の故意(未必の故意を含む)は、単に犯行時の客観的事情のみならず、被告人が行った不自然な受領行為の態様、依頼者との関係、さらには事後的な事情を含めた事実関係を総合的に評価し、自己の行為が詐欺に関与するものである可能性を認識していたか否かによって判断する。
重要事実
被告人は共謀の上、架空の老人介護施設入居権譲渡を装い、被害者に現金を宅配便で送付させた。被告人は本件マンションの居住者ではないが、依頼を受け、他人の郵便受けの投入口から不在連絡票を抜き取り、記載された暗証番号で宅配ボックスを開けて荷物を取り出すという著しく不自然な方法を用いた。また、その数週間後に同様の詐欺未遂事件を起こしていたほか、名宛人とされた人物は当該部屋に居住していなかった。
事件番号: 平成29(あ)44 / 裁判年月日: 平成30年12月11日 / 結論: 破棄自判
マンションの空室に宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が指示を受けてマンションの空室に赴き,そこに配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り,回収役に渡すなどしていること,被告人は同様の受領行為を多数回繰り返して報酬等を受け取っており,犯罪行為に加担していると認識していたこと,詐欺の可能性がある…
あてはめ
被告人の用いた、他人の郵便受けの投入口から不在連絡票を抜き取るという受領方法は極めて不自然である。正当な居住者が、オートロックの解錠方法も教えず第三者にこのような方法で受取を依頼することは考え難い。被告人は、依頼者が居住者ではないにもかかわらず、居住者を装って送付された荷物を受取ろうとしていることを認識していた。また、後日の詐欺未遂事件でも同一の電話番号の相手と通話しており、事後的な事情を含めて評価すれば、自己の行為が詐欺に関与するかもしれないという未必的な認識があったと推認できる。
結論
被告人には詐欺の未必の故意および共犯者との共謀が認められ、詐欺罪が成立する。
実務上の射程
特殊詐欺の主観的態様(故意)が争点となる実務において重要。原審は「以前の反復継続した経験」を重視したが、最高裁は「不自然な受領態様」や「事後的な他事件での通話状況」等も有力な推認資料となると判示した。答案上は、客観的状況の不自然さを指摘した上で、未必の故意を肯定する流れで活用する。
事件番号: 平成28(あ)1808 / 裁判年月日: 平成30年12月14日 / 結論: 破棄自判
宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が自宅に配達される荷物を依頼を受けて名宛人になりすまして受け取り,直ちに回収役に渡す仕事を複数回繰り返して多額の報酬を受領していること,被告人は荷物の中身が詐欺の被害品である可能性を認識しており,現金とは思わなかったなどと述べるのみで詐欺の可能性があるとの認識が…
事件番号: 昭和28(あ)4601 / 裁判年月日: 昭和30年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員の交付を目的とする詐欺罪において、代金支払場所から離れた工場等の現場で量目を仮装するなどの欺罔行為を開始した時点であっても、それが支払担当者に対する一連の欺罔行為の端緒となるものであれば、実行の着手が認められる。 第1 事案の概要:被告人の共犯者Aは、B製鋼所の指定業者であるC物産の代行商人と…