共犯者による欺罔行為がされた後,だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに共犯者らと共謀の上,詐欺を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた被害者から発送された荷物の受領行為に関与したなどの本件事実関係(判文参照)の下では,だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず,被告人はその加功前の欺罔行為の点も含め詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負う。
共犯者による欺罔行為後だまされたふり作戦開始を認識せずに共謀の上被害者から発送された荷物の受領行為に関与した者が詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負うとされた事例
刑法60条,刑法250条,刑法246条1項
判旨
詐欺罪の共謀加担前に共犯者が既に欺罔行為を終えていた場合であっても、その後に「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに、欺罔行為と一体のものとして予定されていた財物受領行為に関与した者は、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
共犯者による欺罔行為が既に行われ、かつ被害者が「だまされたふり作戦」を開始して錯誤に陥っていない状態において、事後的に受領役として共謀・加担した者に詐欺未遂罪の共同正犯が成立するか。
規範
1. 詐欺未遂罪の成否において、欺罔行為によって既に結果発生の具体的危険が生じている場合、その後に被害者が真実を覚知して「だまされたふり作戦」に移行したとしても、未遂罪の成立を妨げない。 2. 共謀加担前に共犯者が既に実行行為の一部(欺罔行為)を行っていた場合であっても、加担者が詐欺の情を知りつつ、欺罔行為と一体として予定されていた後続行為(受領行為等)を分担したときは、先行する実行行為を含めた全体について共同正犯としての責任を負う。
重要事実
1. 共犯者は被害者に対し、ロト6の違約金名目で現金をだまし取ろうと考え、嘘の電話をかけて誤信させた(欺罔行為)。 2. 被害者は嘘を見破り、警察と協力して「だまされたふり作戦」を開始し、現金を含まない荷物を指定場所に発送した。 3. 被告人は、上記欺罔行為の終了後、かつ「だまされたふり作戦」の開始後に、詐欺の被害金を受け取る役割であることを認識しつつ共犯者と共謀した。 4. 被告人は、作戦の開始を知らぬまま、配送業者から荷物を受け取ろうとした(受領行為)。
あてはめ
1. 本件では、被告人の加担前に共犯者が本件欺罔行為を行っており、これにより詐欺罪の実行の着手が認められる。 2. 被害者が嘘を見破り「だまされたふり作戦」を開始したことで、実際に財物を交付させる(既遂に至る)客観的蓋然性は失われている。しかし、被告人はその事実を認識せずに、詐欺を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。 3. 被告人は、自己の関与前の欺罔行為も含めた本件詐欺を、自己の犯罪として遂行する意思で加担したといえる。したがって、加重的な責任を負わせるものではなく、先行する欺罔行為の効果を利用して犯罪を継続した点に共同正犯の根拠が認められる。
結論
被告人は、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、加功前の欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負う。
実務上の射程
特殊詐欺の受け子に対し、たとえ現場に臨んだ時点で既に被害者が警察に通報済み(だまされたふり作戦開始後)であったとしても、一連の詐欺計画の一部を分担する意思がある限り、詐欺未遂罪の共同正犯が成立することを明確に示した。
事件番号: 平成29(あ)44 / 裁判年月日: 平成30年12月11日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 平成30(あ)1224 / 裁判年月日: 令和元年9月27日 / 結論: 破棄自判
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