一 原判決は、被告人が原審相被告人A等と本件詐欺を共謀した上Aと兩名でB等と面會し、その間にAがBから金張能面箱を騙取しようとしたがその目的を遂げなかつた旨判示して、これを詐欺未遂の共犯として處斷したのである。共犯であるから、假りに所論のように被告人が自發的に中止したという事實があつたとしても、共犯者のなした行爲については、被告人も亦罪責を免れることはできない。 二 団体交渉行為に際し組合員多数が共同して会社側交渉委員に対し脅迫的言辞を弄し組合側の要求を承諾すべき旨執拗に迫り、両者の間に置いてある机を叩いてその表面に張つてあるベニヤ板の損壊し、交渉を打ち切つて退場しようとする会社側交渉委員を包囲するようにして退路を遮断する等その身体自由に対し危害を加えるような行為に出で脅迫畏怖させた上組合側の要求事項を受諾する旨の確約書を作成交付させた場合は正当な団体交渉行為にあたらない。
一 共犯者の一人が犯行を自發的に中止した場合と共同正犯の成否 二 正当な団体交渉行為にあたらない一事例
刑法60條,刑法43條,労働組合法1条2項,憲法28条
判旨
共犯関係にある者が犯罪を実行しようとした場合、仮にそのうちの一人が自発的に実行を中止したとしても、他の共犯者が実行を継続した以上、中止した者もその結果について共犯としての責任を免れない。
問題の所在(論点)
数人が共謀して犯罪を実行しようとした場合において、その中の一人が自発的に中止したとき、その者は他の共犯者の行為によって生じた結果(未遂)について刑責を免れることができるか。また、中止した事実が量刑に影響を及ぼすか。
規範
共犯者の一人が自己の意思により実行を中止したとしても、他の共犯者による実行行為が継続され、未遂等の結果が生じた場合には、当該中止者は他の共犯者の行為によって生じた罪責を免れることはできない。
重要事実
被告人は、他の共犯者らと詐欺を共謀し、共犯者と共に被害者と面会した。その後、共犯者が被害者から金張能面箱を騙取しようとしたが、その目的を遂げられず、詐欺未遂に終わった。被告人は、自らが自発的に実行を中止したと主張して、未遂罪の責任を否定し、または量刑の不当を訴えて上告した。
あてはめ
被告人が他の共犯者らと詐欺を共謀し、その実行に着手した以上、仮に被告人が自発的に中止したとしても、他の共犯者が詐欺の実行行為を継続した事実に変わりはない。共犯関係が解消されない限り、被告人は他の共犯者がなした行為の結果について責任を負うべきである。したがって、結果として詐欺が未遂に終わった以上、被告人についても詐欺未遂の共犯が成立すると解される。量刑についても、裁判所の裁量により各共犯者ごとに諸般の事情を考慮して決定されるべきものであり、他の共犯者より軽くないとしても違法ではない。
結論
被告人が自発的に中止したとしても、他の共犯者が実行を継続し未遂に終わった以上、被告人は詐欺未遂の共犯としての罪責を免れない。
実務上の射程
共犯の離脱または中止犯の成否が問題となる場面で、単なる心理的な断念だけでは足りず、他の共犯者の行為を制止して結果を防止しなければ中止犯(刑法43条但書)の適用や共犯関係の解消が認められないことを示す。答案では「共犯関係の解消」が認められるための要件(離脱の意思表示と因果関係の遮断)を論じる際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和25(れ)1715 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
一 原審の認定した事実によれば、本件詐欺は俗にモミと称する詐欺賭博によるものであつて、見物人には一の数字を書いた紙玉を落し入れると称して金を賭けさせ、金を賭けたものが一の数字のある紙玉を拾い上げたときは賭金の三倍相当の金をやり、もし他の数字のある紙を拾うたときはその賭金は胴元の所得とするという方法であり、被告人において…
事件番号: 昭和25(あ)812 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審は被告人の控訴趣意書に対しても判断を下すべきであるが、その内容が弁護人の控訴趣意に内含され、実質的に判断されていると認められる場合は、形式的な判断の欠落があっても判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が他数名と共謀して偽造小切手を行使したとされる事案において、被告人は…
事件番号: 昭和24(れ)1165 / 裁判年月日: 昭和24年9月20日 / 結論: 棄却
本件は被告人から第一審判決に對し上訴(控訴)を申し立て、第二審判決は第一審判決が有罪と認めた窃盜の點については無罪を言渡し、刑も第一審判決が懲役三年だつたのを、第二審判決は懲役一年六月に處したものであつて、すなわち被告人の控訴申立はその理由ありと認められたのである。ところで舊刑訴法第五五六條第一項によれば「上訴申立後ノ…