判旨
控訴審は被告人の控訴趣意書に対しても判断を下すべきであるが、その内容が弁護人の控訴趣意に内含され、実質的に判断されていると認められる場合は、形式的な判断の欠落があっても判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
被告人が自ら提出した控訴趣意書に対し、控訴審が判決において明示的な判断を示さなかった場合、判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反(判決不備)となるか。
規範
被告人が提出した控訴趣意書は、被告人による陳述の有無にかかわらず当然に控訴審の訴訟資料となるため、撤回されない限り裁判所はこれに対して判断を下さなければならない。もっとも、被告人の趣意が弁護人の趣意と実質的に共通しており、判決において弁護人の主張に対し理由がない旨の判断がなされている場合には、被告人の趣意に対しても実質的な判断がなされたものと解され、形式的な瑕疵は判決の結論に影響しない。
重要事実
被告人が他数名と共謀して偽造小切手を行使したとされる事案において、被告人は第一審の事実認定を不服として自ら控訴趣意書を提出した。原判決(控訴審)は、弁護人が提出した控訴趣意については理由がない旨を詳細に判断したが、被告人本人が提出した控訴趣意書については判決文に特段の示唆や判断を明記せず、形式的に添付もしていなかった。
あてはめ
被告人の控訴趣意の内容は、第一審が被告人の弁解を容れずに事実を認定したことを非難するものであった。これは、弁護人が提出した控訴趣意書の主張内容に実質的に含まれていることが明らかである。したがって、原判決が弁護人の趣意を理由なしと判断している以上、被告人の趣意に対しても実質的には同様の判断がなされたといえる。よって、原判決に形式的な瑕疵はあるものの、実質的判断の結論を左右するものではない。
結論
控訴審が被告人の控訴趣意に形式上判断を示さなかったとしても、弁護人の趣意に対する判断を通じて実質的に検討されている場合は、判決を破棄すべき理由とはならない。
事件番号: 昭和25(あ)2011 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 棄却
刑訴規則第一八七条第一項は、控訴審には準用されない。
実務上の射程
控訴審における裁判所の判断遺脱の有無が問題となる場面で活用できる。実務上は被告人と弁護人の主張の重なり具合を検討し、実質的な判断がなされているか否かを論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和24(れ)1165 / 裁判年月日: 昭和24年9月20日 / 結論: 棄却
本件は被告人から第一審判決に對し上訴(控訴)を申し立て、第二審判決は第一審判決が有罪と認めた窃盜の點については無罪を言渡し、刑も第一審判決が懲役三年だつたのを、第二審判決は懲役一年六月に處したものであつて、すなわち被告人の控訴申立はその理由ありと認められたのである。ところで舊刑訴法第五五六條第一項によれば「上訴申立後ノ…
事件番号: 昭和41(あ)2814 / 裁判年月日: 昭和42年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に事実誤認の瑕疵が含まれる場合であっても、他の証拠により犯罪の成立が十分に認められるときは、判決の結果に影響を及ぼすものではないため、上告趣意とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、約束手形6通を偽造したとして起訴された。原判決は、本件偽造手形6通すべての金額欄が「チェッ…