判旨
通常支払可能な通知書を、性質上絶対に支払不可能であると主張することは法律上の正当な理由にならず、詐欺罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
客観的に通常支払可能な通知書を、性質上絶対に支払不可能であると主張して金銭を詐取する行為が、詐欺罪(刑法246条)における欺罔行為にあたるか。
規範
欺罔行為の有無については、対象となる書面等が客観的に経済的価値を有し、または支払手段として機能し得る性質のものであるか否かという観点から判断すべきである。客観的に通常支払可能な性質を有する書面について、主観的な見解に基づき支払不可能であると主張しても、詐欺罪の成立は否定されない。
重要事実
被告人が、判示された通知書を用いて金銭的利得を得ようとした事案において、弁護人は当該通知書が性質上絶対に支払不可能であると主張して無罪を訴えた。しかし、第一審判決では当該通知書は「通常支払可能」なものであると認定されていた。
あてはめ
本件において、問題となった通知書は第一審判決の説示によれば「通常支払可能」なものであった。これに対し、弁護人は「性質上絶対に支払不可能」であるとの独自の法律論を展開するが、これは客観的事実と相容れない見解にすぎない。したがって、客観的に価値のある書面を無価値なものと偽る、あるいはその逆の態様で相手方を錯誤に陥れる行為は、詐欺罪の構成要件を充足するものといえる。
結論
被告人の主張は独自の見解に基づく法律論にすぎず、詐欺罪の成立を肯定した原判決に誤りはないため、上告は棄却される。
実務上の射程
詐欺罪における客観的価値の判断において、被告人側の主観的・特異な価値判断(支払不能との強弁)は排斥されることを示す。実務上は、支払手段の有効性や価値の有無が争点となる場面で、客観的な支払可能性の有無を基準とする際の根拠となり得る。
事件番号: 昭和25(あ)812 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審は被告人の控訴趣意書に対しても判断を下すべきであるが、その内容が弁護人の控訴趣意に内含され、実質的に判断されていると認められる場合は、形式的な判断の欠落があっても判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が他数名と共謀して偽造小切手を行使したとされる事案において、被告人は…
事件番号: 昭和26(あ)1640 / 裁判年月日: 昭和27年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽の書面を作成・行使して他人を欺罔し財物を交付させた場合、たとえ私文書偽造・同行使罪の成立が否定されたとしても、詐欺罪(刑法246条)が成立することに妨げはない。 第1 事案の概要:被告人は、虚偽の内容を含む書面を作成し、これを用いて相手方を欺き、金員等の交付を受けたとされる事案。第一審判決は私…