本件は被告人から第一審判決に對し上訴(控訴)を申し立て、第二審判決は第一審判決が有罪と認めた窃盜の點については無罪を言渡し、刑も第一審判決が懲役三年だつたのを、第二審判決は懲役一年六月に處したものであつて、すなわち被告人の控訴申立はその理由ありと認められたのである。ところで舊刑訴法第五五六條第一項によれば「上訴申立後ノ未決勾留ノ日数ハ……檢事ニ非ザル者ノ上訴ニシテ其ノ理由アルトキハ勾留日数ノ全部……ヲ本刑ニ通算ス」ることになつて、いるのであつて、その場合上訴裁判所は判決において通算の言渡をなすべきものでないことは、當小法廷の判例の示すところである。(昭和二三年(れ)第一七五五號、同二四年三月一五日判決、昭和二三年(れ)第二一一一號、同二四年五月三一日判決)
被告人による控訴申立後の未決勾留日数の通算を判決において言渡すことの要否
判旨
被告人側の控訴に理由がある場合、控訴審における未決勾留日数は、判決での言渡しがなくとも旧刑訴法556条1項により当然に本刑へ通算される。また、詐欺未遂において相手方が金を交付しなかったことが原因で既遂に至らなかった場合は、任意の中止(中止犯)とは認められない。
問題の所在(論点)
1. 控訴裁判所が被告人側の控訴を認めて減刑した場合に、控訴審の未決勾留日数を判決で算入しなかったことは、刑法21条および憲法34条に違反するか。 2. 相手方の拒絶等により結果が発生しなかった場合に、刑法43条但書の中止犯が成立するか。
規範
1. 未決勾留日数の算入について:被告人側の控訴に理由があるときは、旧刑訴法556条1項に基づき、控訴後の未決勾留日数は当然に本刑に通算される。この場合、裁判所は判決において通算の言渡しをすることを要しない。 2. 中止犯(刑法43条但書)の要件について:犯罪の実行に着手したが、自己の意思によりこれを中止したといえるためには、外部的障害によるものではなく、任意に中止したことが必要である。
重要事実
被告人は第一審で窃盗および詐欺未遂の罪により懲役3年に処せられた。被告人が控訴したところ、第二審は窃盗について無罪とし、懲役1年6月に減刑したが、控訴審の未決勾留日数を本刑に算入する旨の言渡をしなかった。また、被告人は詐欺未遂について、自ら中止したものであるから中止犯の規定を適用すべきと主張したが、実際には相手方が金を交付しなかったために未遂に終わったものであった。
あてはめ
1. 未決勾留日数の点について:被告人の控訴により第一審の懲役3年が1年6月に減刑されており、控訴には「理由がある」といえる。旧刑訴法556条1項は、検察官以外の者が申し立てた上訴に理由があるときは勾留日数の全部を通算すると規定している。したがって、判決での言渡しがなくとも当然に通算の利益を受けるため、違法はない。 2. 中止犯の点について:本件において詐欺が未遂に終わった原因は、被告人が自発的に断念したことではなく、被害者が金を渡さなかったという外部的状況にある。これは「自己の意思により」中止したとは認められず、単なる障害未遂に留まると解される。
結論
1. 未決勾留日数の算入言渡しがないことは適法である(当然に通算されるため)。 2. 被告人の行為は中止犯には当たらず、詐欺未遂罪(障害未遂)の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
1. 現行刑法21条および刑事訴訟法下においても、未決勾留の算入は原則として裁判所の裁量であるが、上訴審での通算については刑事訴訟法等の規定に従い処理されるべきことを示す。 2. 中止犯の判断において、被害者の拒絶や不協力といった外部的障害が介在する場合には「任意性」が否定されるという、実務上確立された基準を確認するものである。
事件番号: 昭和25(あ)812 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審は被告人の控訴趣意書に対しても判断を下すべきであるが、その内容が弁護人の控訴趣意に内含され、実質的に判断されていると認められる場合は、形式的な判断の欠落があっても判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が他数名と共謀して偽造小切手を行使したとされる事案において、被告人は…
事件番号: 昭和25(れ)1461 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 破棄自判
原判決の刑と第一審判決のそれとをくらべてみると両者は未決勾留日数を本刑に通算する点を除いてその他の部分はすべて同じであるが、前者は後者において本刑に通算せられた第一審の未決勾留日数中、六〇日をその本刑に算入していないこと論旨の指摘するとおりである。しからば原判決の刑は第一審判決の刑より重いこと明らかである。しかるに本件…