第一審判決は、(辯護人のなした)右中止犯の主張とは全く相容れない障礙未遂の判示をしているのであるから、これにより中止犯の主張を排斥したものであることは容易に了解し得るところであつて、右判決に、辯護人の右主張に對し判斷を與えなかつた違法があるとはいい得ない。
辯護人の中止犯の主張に對し障礙未遂の判示をした場合と主張に對する判斷の有無
刑法43條,舊刑訴法360條2項
判旨
判決において主張と相容れない事実が示されている場合、当該主張を排斥したものと解され、明示の判断を欠いても違法ではない。また、控訴審は第一審とは別個に量刑等を独自の立場から裁定し得るものであり、第一審に誤りがあったとしても直ちに未決勾留日数の算入等が違法となるわけではない。
問題の所在(論点)
1. 判決理由において主張に対する明示の判断がない場合に、判断遺脱の違法があるといえるか。 2. 第一審の誤りが控訴を誘発した場合において、控訴審が未決勾留日数の算入を考慮しなかったことは違法か。
規範
判決における判断の適法性について、判決理由中に被告人側の主張と全く相容れない事実の判示がある場合には、当該判示によって当該主張を排斥したものと解される。また、控訴審は覆審としての性質を有し、量刑や未決勾留日数の算入について独自の立場から裁定し得る自由裁量を有する。
重要事実
被告人の弁護人が第一審において中止犯の主張をなしたが、第一審判決はこれについて特別な判断を明示せず、障礙未遂の事実を認定した。また、控訴審(原審)は第一審の懲役8年を懲役7年に減軽したが、第一審の誤り等を理由とする未決勾留日数の算入については裁定通算を行わなかったため、弁護人がこれらを違法として上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1165 / 裁判年月日: 昭和24年9月20日 / 結論: 棄却
本件は被告人から第一審判決に對し上訴(控訴)を申し立て、第二審判決は第一審判決が有罪と認めた窃盜の點については無罪を言渡し、刑も第一審判決が懲役三年だつたのを、第二審判決は懲役一年六月に處したものであつて、すなわち被告人の控訴申立はその理由ありと認められたのである。ところで舊刑訴法第五五六條第一項によれば「上訴申立後ノ…
あてはめ
1. 第一審判決は、中止犯の主張と論理的に相容れない「障礙未遂」の事実を明示的に判示している。この場合、中止犯の主張を排斥していることは容易に了解可能であるため、判断遺脱の違法はない。 2. 控訴審は覆審であり、第一審の判断に拘束されず独自の立場で量刑等を決定できる。第一審の誤りが控訴を誘発した事案であっても、算入の措置を講じるか否かは裁量の範囲内であり、算入しなかった一事をもって直ちに違法とはいえない。また、本件では結果として減軽されており、控訴申立後の未決勾留日数は法定通算されるため、裁定通算をしないことに問題はない。
結論
中止犯の主張を排斥する事実の判示がある以上、明示の判断を欠いても違法ではない。また、控訴審の量刑・算入判断は独自の裁量に基づくものであり適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法上の理由不備や判断遺脱の主張に対する反論として有用。判決理由において結論と矛盾する主張が論理的に否定されているかを確認する際の基準となる。また、控訴審の覆審的性格と量刑裁量の広さを説明する際にも引用可能。
事件番号: 昭和23(れ)668 / 裁判年月日: 昭和23年10月26日 / 結論: 棄却
一 原判決舉示の證據を以てすれば、本件被告人の所爲は、被害者の反抗を抑壓するに足る脅迫行爲を以て強盜をしようとしたものであるという事實が證明できるのであるから、原判決がこれに對して強盜未遂罪の罰條を適用したことは相當である。 二 刑事訴訟法第三四五條第一項は、「檢事ハ被告事件ノ要旨ヲ陳述スヘシ」というのみであるから、苟…
事件番号: 昭和24(れ)1072 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 棄却
檢事が現行犯人又は準現行犯人として逮捕された被疑者を受け取つたときは、檢事は舊刑訴法第一二九條に從い、兎も角訊問することが要求されているのであつて、訊問の結果勾留の必要がないと認めたときは直ちに釋放すべくその必要ありと認めたときは、現行犯手續の適否を考慮して刑訴應急措置法第八條第三號其の他に從つて適當な措置を講ずべきも…