檢事が現行犯人又は準現行犯人として逮捕された被疑者を受け取つたときは、檢事は舊刑訴法第一二九條に從い、兎も角訊問することが要求されているのであつて、訊問の結果勾留の必要がないと認めたときは直ちに釋放すべくその必要ありと認めたときは、現行犯手續の適否を考慮して刑訴應急措置法第八條第三號其の他に從つて適當な措置を講ずべきものである。從つて檢事が右被疑者を受け取るまでの間の逮捕その他の現行犯手續が假りに違法であつたとしても、又被疑者訊問の檢事の措置が假に違法であつたとしても、檢事が舊刑訴法第一二九條に從い適法になした右訊問が違法となるべき理由は少しも存しない。
檢事の現行犯手續及び被疑者訊問の措置が違法であつた場合に適法になした被疑者訊問の効力
舊刑訴法129條,刑訴應急措置法8條3號
判旨
判決書の証拠表示に明白な誤記があっても、記録上正しきが明らかであれば上告審において訂正して判断することができ、また、先行する逮捕手続に違法があったとしても、それにより直ちに検察官の訊問調書が無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
1. 判決書における証拠表示の誤記(「検察官」を「司法警察官」と記載)が、破棄事由となるか。 2. 先行する逮捕手続に違法がある場合、その後に作成された検察官の訊問調書は無効となるか。
規範
1. 判決の証拠表示における明白な誤記は、訴訟経済の見地から、上告審において正しい事実に従って判断することが許容される。 2. 逮捕等の現行犯手続に違法があったとしても、検察官が法(旧刑訴法129条)に従い適法に行った訊問自体が、直ちに違法として無効となるものではない。
重要事実
被告人等は強盗殺人の罪で起訴された。第一審判決において、事実認定の証拠として「司法警察官の訊問調書」を挙げたが、実際には該当箇所には「検察官の訊問調書」が綴じられており、内容も後者と一致していた。また、相被告人の逮捕手続(準現行犯逮捕)に令状がなく違法である疑いがあったため、その後の検察官による訊問調書の証拠能力が争われた。
事件番号: 昭和24(れ)650 / 裁判年月日: 昭和24年6月23日 / 結論: その他
原判決は被告人A、Bの犯罪事實を認定するにあたり、證人Cに對する豫審訊問調書中の同人の供述記載を證據として採用しているのである、ところが記録を調べてみると原審第三回公判期日において沖辯護人は右Cを證人として喚問されたとき旨證據申請をしたに拘わらず原審はこれを却下したこと及び右Cについては第一審においても證人として訊問さ…
あてはめ
1. 本件では、判決が掲示する供述内容が検事の調書と完全に符合し、他に紛らわしい書類も存在しない。したがって、証拠の名称は「検事」を誤って表示したものと明白に認められるため、上告審で正しきに従い判断して差し支えない。 2. 検察官は現行犯人等を受け取った際は法に基づき訊問すべき義務があり、本件訊問は法定期間内に行われ不当な点もない。仮に先行する逮捕手続が不法であったとしても、検察官の訊問権が否定されるわけではなく、調書の効力に影響を及ぼさない。
結論
1. 明白な誤記に基づく違憲・違法の主張は理由がない。 2. 逮捕手続の不法を理由とする訊問調書の無効主張は失当であり、本件上告を棄却する。
実務上の射程
手続違法が後続の証拠収集に及ぼす影響(違法収集証拠排除法則)の初期の判断枠組みを示す。現在は「重大な違法」と「証拠排除の相当性」で判断されるが、先行手続の瑕疵が直ちに後続行為を無効化しないとする法理として参照される。また、死刑の合憲性についても大法廷判例を引用して維持している。
事件番号: 昭和24(れ)614 / 裁判年月日: 昭和24年8月18日 / 結論: 棄却
一 公判廷における証拠調の請求について、その採否の決定をすることなく弁論を終結して判決を言い渡したとしても、右証拠調の請求が単に原審相被告人のためにされたものであり、被告人に何等関係のない場合には、その違法は原判決破棄の事由にならない。 二 訊問調書にはその取調をした年月日を記載すれば足るのであつて、檢證、押収又は捜査…