一 公判廷における証拠調の請求について、その採否の決定をすることなく弁論を終結して判決を言い渡したとしても、右証拠調の請求が単に原審相被告人のためにされたものであり、被告人に何等関係のない場合には、その違法は原判決破棄の事由にならない。 二 訊問調書にはその取調をした年月日を記載すれば足るのであつて、檢證、押収又は捜査の場合のように必ずしもその時刻を記載する必要はないのである。(舊刑訴法五六乃至五八條参照)從つて假りに訊問調書にその訊問をした時刻の記載があり、しかも假りにその記載が正確を缺いていたとしてもその必要的記載事項に關しないかかる一事由から直ちに該調書そのものの無効を結論し得ないことは勿論であろう。
一 公判廷における原審相被告人のための証拠調の請求について決定をしなかつた違法と判決破棄の事由 二 訊問をした時刻の記載が正確を缺く訊問調書の効力
旧刑訴法410条14号,旧刑訴法344条,舊刑訴法56條,舊刑訴法58條1項
判旨
緊急逮捕の手続中、訊問調書に「現行犯人」と誤記されていても、それが不動文字の修正漏れに過ぎない場合は調書の効力に影響せず、また時刻の記載に不正確な点があっても直ちに無効とはならない。
問題の所在(論点)
緊急逮捕時に作成された訊問調書において、逮捕種別の誤記や、取調時刻の不正確な記載がある場合、当該調書は無効となるか。
規範
捜査機関が作成する訊問調書において、記載内容の一部に形式的な誤りや不正確な点があったとしても、それが必要的記載事項に関するものでない場合、または実態に照らして単なる誤記と認められる場合には、当該調書が直ちに無効となることはない。
重要事実
被告人らは緊急逮捕の手続により逮捕されたが、司法警察官が作成した訊問調書の冒頭には、印刷された不動文字を削り忘れたために「現行犯人を受取り」との記載があった。また、調書には「午前九時」という同一時刻に複数名の被疑者を訊問した旨の記載があったほか、司法警察官が当日旅行していた等の事情から、弁護人は調書が虚偽・無効であると主張した。
事件番号: 昭和24(れ)1072 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 棄却
檢事が現行犯人又は準現行犯人として逮捕された被疑者を受け取つたときは、檢事は舊刑訴法第一二九條に從い、兎も角訊問することが要求されているのであつて、訊問の結果勾留の必要がないと認めたときは直ちに釋放すべくその必要ありと認めたときは、現行犯手續の適否を考慮して刑訴應急措置法第八條第三號其の他に從つて適當な措置を講ずべきも…
あてはめ
まず、逮捕種別の誤記については、印刷された用紙を流用した際の消し忘れに過ぎず、緊急逮捕においても直ちに尋問すべき職権・職責は現行犯逮捕と同様であるから、威圧的な擬装とはいえない。次に、時刻の記載については、旧刑訴法上(現行法も同様)、年月日が記載されていれば足り、時刻の正確性は必要的記載事項ではない。また、同一時刻の記載も「その時刻頃」の意と解釈可能であり、司法警察官の旅行等の事情を考慮しても、物理的に訊問が不可能であったとは断定できない。
結論
本件各訊問調書は無効ではなく、証拠能力が認められる。したがって、原判決の判断に違法はない。
実務上の射程
手続の形式的瑕疵が証拠能力を否定するほどの重大な違法に至るかどうかの判断基準として機能する。特に、書式の流用による誤記や、分単位の正確性を欠く取調時刻の記載といった軽微な瑕疵については、実態に照らして有効性を維持する傾向にあることを示している。
事件番号: 昭和23(れ)1312 / 裁判年月日: 昭和24年2月24日 / 結論: 棄却
一 舊刑訴第七一條第二項は、公文書の公正を期するために訓示的規定に過ぎないのであるから、たとい、その一部に同條項所定の契印が缺如しているとしても、その形式及び内容に照らし正當の連絡がありその間に落丁又は後日の剥脱等のないことが認められるときは、契印遺脱の一事を以て直ちに該文書を無効となすべきではない。 二 同一事實に關…