原判決は被告人A、Bの犯罪事實を認定するにあたり、證人Cに對する豫審訊問調書中の同人の供述記載を證據として採用しているのである、ところが記録を調べてみると原審第三回公判期日において沖辯護人は右Cを證人として喚問されたとき旨證據申請をしたに拘わらず原審はこれを却下したこと及び右Cについては第一審においても證人として訊問されていないことが明かである。然らば原審は前記豫審調書の供述者Cを公判期日において訊問する機會を被告人等に與ヘないで右調書を證據としたものであるから原判決は刑訴應急措置法第一二條第一項に違反するもので論旨は理由があり、原判決中被告人A、Bに關する部分は破棄を免れない。
第一審において證人訊問の機會を與えず第二審においては右證人申請を却下しながら豫審訊問調書中の同人の供述記載を採證した判決の違法
刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人に供述者を公判期日において訊問する機会を一度も与えずに、予審訊問調書を証拠として採用することは許されないが、第一審等で既に訊問の機会が与えられていた場合には、重ねて訊問を行わずに証拠採用しても違法ではない。
問題の所在(論点)
被告人が公判期日において直接訊問する機会を与えられていない供述者の予審訊問調書を、証拠として採用することの可否。また、前の審級で訊問の機会があった場合に、後の審級で重ねて訊問を行う必要があるか。
規範
被告人に対し、公判期日において供述者を訊問する機会(反対訊問の機会)を一度も与えないまま、その者の供述を録取した調書を証拠とすることは、刑事訴訟の基本原則に反し許されない。ただし、第一審等の公判手続において既に当該供述者を訊問し、証拠内容を確認する機会が与えられていたのであれば、控訴審等の後の審級において重ねて訊問を行うことなく、当該調書を証拠として採用することができる。
重要事実
事件番号: 昭和24(れ)1072 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 棄却
檢事が現行犯人又は準現行犯人として逮捕された被疑者を受け取つたときは、檢事は舊刑訴法第一二九條に從い、兎も角訊問することが要求されているのであつて、訊問の結果勾留の必要がないと認めたときは直ちに釋放すべくその必要ありと認めたときは、現行犯手續の適否を考慮して刑訴應急措置法第八條第三號其の他に從つて適當な措置を講ずべきも…
被告人A、B、Dらは共同して犯罪に及んだとして起訴された。原審(控訴審)は、被告人A、Bについて、証人Cの予審訊問調書を証拠として犯罪事実を認定したが、Cは第一審でも原審でも証人として訊問されておらず、被告人側に訊問の機会が与えられていなかった。一方で、被告人Dについては、原審が証人Fの予審訊問調書を証拠としたが、Fは第一審公判廷に召喚され、当該調書の記載内容について相違ないか訊問を受ける機会が既に与えられていた。
あてはめ
被告人A、Bに関しては、証人Cを訊問する機会が第一審および原審を通じて一度も与えられていない。それにもかかわらずCの予審調書を証拠として採用した原判決は、刑訴応急措置法12条1項(現在の伝聞法則および反対訊問権の趣旨)に違反する。これに対し、被告人Dに関しては、証人Fは第一審において既に訊問され、調書内容を確認する機会が被告人に与えられている。このように既に訊問の機会が付与された書類については、第二審で重ねて訊問せずとも証拠とすることが可能であり、違法とはいえない。
結論
被告人A、Bについては、訊問機会のない証拠の採用を違法として原判決を破棄し、差し戻す。被告人Dについては、既に訊問の機会があったため証拠採用を適法とし、上告を棄却する。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条等)や憲法37条2項の証人審問権の射程を検討する際の基礎となる。特に、反対訊問の機会が一度でも保障されていれば、伝聞証拠の証拠能力が認められ得るという「機会の付与」の重要性を示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和24(れ)1465 / 裁判年月日: 昭和24年11月8日 / 結論: 棄却
原判決に「匕首や出刄庖丁」とあるが、原審がその證據として舉げた被告人の供述中には、共犯者Aが「出刄庖丁」Bが「庖丁」を持つたとあつて「匕首」といふことがあらわれていないから、原判決には虚無の證據によつて事實を確定した違法があるという、のである。なるほど原判決の事實摘示と證據に舉げた被告人の供述の内容との食いちがいは所論…
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…