しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第九四八號同二四年二月八日第二小法廷判決)
強盜の手段としての暴行脅迫の程度と恐喝罪
刑法236條,刑法249條
判旨
強盗罪の成否において、暴行・脅迫が社会通念上相手方の反抗を抑圧する程度のものであり、かつ財物奪取との間に因果関係があれば、被害者が現実に反抗不能に陥らず畏怖に留まったとしても、強盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗罪における「暴行又は脅迫」の程度は、被害者の主観を基準とすべきか、それとも客観的な基準によるべきか。また、被害者が現実に反抗不能に陥っていない場合や自ら財物を交付した場合に、強盗罪の成立が妨げられるかが問題となる。
規範
強盗罪(刑法236条)の成否は、犯人によってなされた暴行又は脅迫が、社会通念上、相手方の反抗を抑圧する程度のものであるか否かという客観的基準によって決すべきである。この程度の暴行・脅迫があり、かつそれと財物奪取との間に因果関係が認められるならば、たとえ被害者の主観において現実に反抗が抑圧されるに至らず、単に畏怖したに止まる場合であっても、また被害者自ら財物を交付した場合であっても、恐喝罪ではなく強盗罪が成立する。
重要事実
被告人らは共謀の上、被害者に対して暴行又は脅迫を加え、これによって被害者から財物を奪取した。被告人らは、本件が強盗罪ではなく恐喝罪に該当する旨を主張して上告したが、原判決(第3の事実)は強盗罪の成立を認めていた。被害者の主観的な心理状態として、反抗が完全に封じられたわけではなく単なる畏怖にとどまっていた可能性や、自ら財物を差し出したという側面が含まれていた事案である。
あてはめ
本件における被告人らの暴行・脅迫行為は、原判決の認定によれば、社会通念上相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであったと認められる。このような客観的な強度の暴行・脅迫がなされ、それによって被害者が畏怖し、結果として財物の奪取(交付を含む)が行われた以上、暴行・脅迫と財物奪取の間に因果関係が認められる。被害者の内心が「反抗抑圧」まで至らず「畏怖」に留まっていたとしても、規範的観点からは強盗罪の要件を満たすと解される。
結論
被告人らの行為は、社会通念上反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫を手段として財物を奪取したものといえるため、強盗罪が成立する。
実務上の射程
強盗罪と恐喝罪の区別基準が「反抗抑圧」の程度の有無にあることを明確にし、かつそれが客観的・標準的な基準(社会通念)によって判定されることを示した。答案上は、被害者の主観的な臆病さや勇敢さに左右されず、行為の客観的態様から強盗罪の成否を論ずる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和23(れ)322 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
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