強盗犯人の用いた脅迫の手段が相手方の意思の自由を抑壓するに足るものであつた以上、偶々相手方がそれに依つて意思の自由を抑壓される事がなかつたとしても強盗未遂罪は成立する。
強盗未遂罪の成立と相手方の意思の自由抑壓の存否
刑法236條,刑法243條,刑法43條
判旨
強盗罪(刑法236条)の暴行・脅迫は、相手方の意思の自由を抑圧するに足りる程度のものであれば足り、現に相手方の意思の自由が抑圧されることを要しない。したがって、客観的に反抗を抑圧するに足りる脅迫を加えたが金員を強取できなかった場合、強盗未遂罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗罪における「脅迫」の程度は、現に被害者の意思の自由を抑圧するものである必要があるか。また、被害者が意思の自由を抑圧されなかった場合に強盗未遂罪が成立するか。
規範
強盗罪(236条)における脅迫とは、客観的に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものをいう。かかる強度の脅迫が行われた以上、たまたま被害者がこれに屈せず意思の自由を抑圧されなかったとしても、同罪の実行の着手が認められ、金員等の領得に至らなかった場合は強盗未遂罪(243条)が成立する。
重要事実
被告人は、飲酒のうえ被害者宅を訪れ、所持していた包丁を被害者に突き付けて「5000円を貸せ」と脅迫し、金銭を強取しようとした。しかし、被害者がこれに応じなかったため、目的を遂げることができなかった。
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…
あてはめ
被告人が包丁を突き付けて金銭を要求した行為は、社会通念上、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫であるといえる。本件において、被害者がたまたま被告人の要求に応じず、現に意思の自由を抑圧されるに至らなかったという事実はあるが、暴行・脅迫の程度の客観的判断に影響を及ぼすものではない。したがって、被告人の所為は強盗罪の実行の着手にあたる。
結論
被告人の行為は、客観的に反抗を抑圧するに足りる脅迫である。被害者が意思の自由を抑圧されず金員の奪取に至らなかった以上、強盗未遂罪が成立する。原判決に擬律錯誤はない。
実務上の射程
強盗罪の暴行・脅迫の程度が「反抗抑圧に足りる程度」という客観的基準によることを明示した判例である。被害者が特異な精神力で屈しなかった場合や、たまたま隙を見て逃げ出した場合でも、客観的に強度の暴行・脅迫があれば強盗未遂罪(または強盗傷致罪等)の成立を認める際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)322 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
官選辯護人を選任せらるるのは第一回公判期日前適當の時期即ち辯護人準備の出來得る時期であることは出來る限り望むべき事ではあるが實際問題としては第一回公判期日の前日或はその當日私選辯護人が選任せらるることは屡々ある實例であり又法律問題としては公判當日の選任はいけないと言う論據や理由は別段にないのである。而して記録に依れば本…
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…