一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところである。 二 強盜罪の成立には被告人が社會通念上被害者の反抗を抑壓するに足る暴行又は脅迫を加え、それに因つて被害者から財物を強取した事實が存すれば足りるのであつて所論のごとく被害者が被告人の暴行脅迫に因つてその精神及び身體の自由を完全に制壓されることを必要としない。
一 少年法第七一條第一項の注意と裁判所の自由裁量 二 強盜罪における暴行脅迫の程度と被害者の畏怖の程度
少年法71條1項,刑法236條
判旨
強盗罪(刑法236条1項)における暴行・脅迫は、社会通念上被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであれば足り、精神・身体の自由が完全に制圧されることまでは要しない。
問題の所在(論点)
強盗罪(236条1項)の構成要件である「暴行又は脅迫」の程度として、被害者の自由が完全に制圧されることまで必要か。また、脅迫と奪取の間に因果関係が必要か。
規範
刑法236条1項の強盗罪が成立するためには、被告人が社会通念上被害者の反抗を抑圧するに足りる暴行または脅迫を加え、それによって被害者から財物を強取した事実があれば足りる。被害者の精神および身体の自由が完全に制圧されることまでは必要とされない。
重要事実
被告人3名は、午前1時頃に屋内に侵入した。被告人AおよびBは草刈鎌を、被告人Cはナイフを被害者等に突きつけ、「静かにしろ」「金を出せ」と言って脅迫し、被害者を畏怖させた。その上で、現金3,170円、腕時計、懐中時計、ライター等40数点を奪取した。
事件番号: 昭和23(れ)913 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
被告人等を少年法による保護處分その他實刑を科せざる處分を受けしめるのが相當であるか否か等はすべて事實審たる原裁判所の裁量權にのみ屬するところである。
あてはめ
被告人らが深夜に屋内に侵入し、草刈鎌やナイフといった凶器を被害者に突きつけて金品を要求した行為は、社会通念上、被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫に該当するといえる。現に被害者はこれにより畏怖しており、この脅迫を手段として財物の強奪が行われていることから、手段たる脅迫と財物強取との間の因果関係も認められる。被害者の自由が完全に制圧されていなかったとしても、反抗抑圧に足りる程度の脅迫がなされている以上、強盗罪の成立を妨げない。
結論
被告人らの行為には強盗罪が成立し、恐喝罪(249条)にとどまるとする主張は理由がない。原審が刑法236条1項を適用したのは正当である。
実務上の射程
強盗罪における「反抗抑圧」の程度に関するリーディングケース。客観的に反抗を抑圧するに足りるかという「客観説」を前提としつつ、完全に自由を奪う必要はないことを明示した。実務上、凶器の使用や深夜の侵入といった状況から、反抗抑圧の程度を認定する際の基準となる。
事件番号: 昭和23(れ)859 / 裁判年月日: 昭和23年12月11日 / 結論: 棄却
強盜の手段たる暴行又は脅迫は、普通人の犯抗を抑壓する程度のものでよいことは當裁判所の判例とするところである。