論旨は、本件被告人等の被害者に加えた暴行脅迫が、被害者を抗拒不能ならしめる程度のものでなかつたことを主張している。しかし暴行脅迫が如何なる程度のものであつたかということは、事實認定の問題である。
暴行脅迫の程度と事實認定
刑法236條
判旨
強盗罪(刑法236条1項)における暴行・脅迫の程度は、被害者の反抗を抑圧(抗拒不能)せしめる程度であることを要する。被害者の反抗を抑圧して財物を強取したと認められる場合には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
刑法236条1項の強盗罪における「暴行又は脅迫」の程度、および恐喝罪との区別が問題となる。また、反抗を抑圧した上での奪取において、被告人の主観的目的(借用の意思や復讐目的)が強盗罪の成否に影響するか。
規範
強盗罪が成立するためには、行使された暴行・脅迫が、客観的に被害者の反抗を抑圧する(抗拒不能に至らせる)に足りる程度のものでなければならない。暴行・脅迫の結果として相手方の反抗が抑圧された状態で財物を強奪したといえる場合には、強盗罪の構成要件を充足する。
重要事実
被告人らは、共謀の上、被害者に対して暴行・脅迫を加えた。それにより被害者の反抗を抑圧した状態を作り出した上で、被害者が所持していた物品を強奪した。被告人側は、当該暴行・脅迫は被害者を抗拒不能ならしめる程度のものではないとして恐喝罪にとどまると主張し、また、物品は一時的に借りたものである、あるいは復讐目的であった等と主張して強盗罪の成立を争った。
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…
あてはめ
原判決の認定によれば、被告人らは被害者に暴行を加え、その反抗を抑圧した上で物品を強奪している。このような暴行・脅迫は、単に畏怖させるにとどまる恐喝罪の態様を超え、客観的に被害者の反抗を封じ込めるに足りる程度のものであったと評価できる。したがって、本件の行為は強盗罪の実行行為としての暴行にあたる。また、一時的な借用や復讐目的との主張は、客観的な強奪の事実を否定するに足りない。
結論
被告人らの行為は、被害者の反抗を抑圧して財物を強取したものとして、恐喝罪ではなく強盗罪が成立する。
実務上の射程
強盗罪と恐喝罪の限界事例において、暴行・脅迫が「反抗抑圧(抗拒不能)」の程度に至っているかを認定する際の規範として機能する。答案上は、強盗罪の成立を検討する冒頭で、本判例を根拠に「被害者の反抗を抑圧するに足りる程度」という規範を立て、具体的態様(凶器の有無、時間、場所、人数差等)をあてはめる指標とする。
事件番号: 昭和23(れ)322 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
官選辯護人を選任せらるるのは第一回公判期日前適當の時期即ち辯護人準備の出來得る時期であることは出來る限り望むべき事ではあるが實際問題としては第一回公判期日の前日或はその當日私選辯護人が選任せらるることは屡々ある實例であり又法律問題としては公判當日の選任はいけないと言う論據や理由は別段にないのである。而して記録に依れば本…
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…