刑訴規則第一八七条第一項は、控訴審には準用されない。
刑訴規則第一八七条第一項は控訴審に準用されるか
刑訴規則187条1項,刑訴規則250条
判旨
科刑上一罪の関係にある数個の公訴事実について、一部が有罪で他が無罪となる場合、無罪部分について判決主文で明示する必要はなく、理由中で判示すれば足りる。
問題の所在(論点)
科刑上一罪(あるいは包括一罪)として起訴された数個の事実のうち、一部が認められない場合に、判決主文で「無罪」を言い渡す必要があるか。刑事訴訟法上の判決主文の記載の在り方が問題となる。
規範
裁判所が数個の公訴事実について、その一部を有罪、他の一部を無罪と判断する場合であっても、それらの事実が互いに手段・結果の関係にあるなど「一罪」として起訴されたものであるならば、無罪部分について主文で個別に言渡す必要はなく、判決理由中でその旨を判示すれば足りる。
重要事実
被告人が、数個の公訴事実について、互いに手段と結果の関係にある「一罪」として起訴された事案。原審は、これらの事実のうち一部を有罪とし、他の事実については無罪と判断したが、判決主文において無罪の言渡しを行わず、判決理由の中でその旨を判示した。これに対し、被告人側が主文で無罪を言い渡さないのは違法であるとして上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1921 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の公文書が同時に偽造された場合や、偽造と行使が牽連関係にある包括一罪等の関係にある場合、その一罪の一部について起訴があれば、起訴状に直接記載のない残余の部分についても当然に審判の範囲に属する。 第1 事案の概要:被告人らは、公文書を偽造し、これを行使して貨物係員を欺き、タイヤ等を騙取したとして…
あてはめ
本件における数個の公訴事実は、互いに手段・結果の関係にあるものとして、全体として一罪を構成するものとして起訴されている。このような場合、公訴事実の一部が否定されたとしても、全体としての「一罪」に対する結論は有罪判決の主文に包含される。したがって、有罪となる部分について主文で刑を言い渡せば、それと一体をなす無罪部分について別途主文を設ける必要はなく、判決理由の中で判断の過程を示せば足りる。原判決が主文で無罪に触れなかったことは正当である。
結論
数個の事実が科刑上一罪の関係にある場合、その一部について無罪の言渡しを主文でする必要はなく、理由中の判示で足りる。
実務上の射程
裁判論における「主文の不可分性」に関連する。科刑上一罪や包括一罪といった訴因上の一罪において、一部無罪となる事案の起案(検察起案・裁判起案)で、主文に「被告人は無罪」と書かない根拠として用いる。ただし、併合罪(数罪)として起訴されている場合には、各罪ごとに主文で有罪・無罪を明示する必要がある点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(れ)1557 / 裁判年月日: 昭和27年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の虚偽の転出証明書を用いた詐欺等の犯行について、実質的に単一の犯意に基づく一連の行為と認められる場合には、これらを包括して一罪と解することができる。また、共犯者間で宣告刑に差異が生じても、犯情の個別性に基づくものである限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、共…
事件番号: 昭和25(あ)812 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審は被告人の控訴趣意書に対しても判断を下すべきであるが、その内容が弁護人の控訴趣意に内含され、実質的に判断されていると認められる場合は、形式的な判断の欠落があっても判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が他数名と共謀して偽造小切手を行使したとされる事案において、被告人は…
事件番号: 昭和27(れ)201 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の証明書を偽造した行為について、単一の犯意に基づく一連の動作とは認められない場合、各証明書の作成ごとに独立した偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、人絹糸需要者割当証明書を複数枚にわたり偽造した。弁護人は、これらが単一の犯意の発現たる一連の動作によるものであり、一罪(または包括一罪)…
事件番号: 昭和26(れ)2228 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
別件についての原審相被告人Aの弁護人の上告論旨引用は許されない。