判旨
複数の虚偽の転出証明書を用いた詐欺等の犯行について、実質的に単一の犯意に基づく一連の行為と認められる場合には、これらを包括して一罪と解することができる。また、共犯者間で宣告刑に差異が生じても、犯情の個別性に基づくものである限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
1. 複数の偽造書類を用いた詐欺等の犯行を包括一罪として処理することの是非。2. 共犯者間で実刑と執行猶予の差異が生じることの憲法14条適合性。
規範
1. 数個の犯罪構成要件的行為がなされた場合であっても、それが実質的に単一の犯意に基づき、場所的・時間的近接性や手法の共通性を有する等、一連の行為として評価できるときは、これらを包括して一罪(包括一罪)と解するのが相当である。2. 量刑において、共犯関係にある被告人らの間で刑の執行猶予の有無等に差異を設けることは、犯情の類似性にかかわらず直ちに憲法14条に違反するものではない。
重要事実
被告人らは、共謀の上、偽造された転出証明書を各2通使用し、行政機関等を欺いて不正な利益を得る等の詐欺行為等を行った。原審は、これらの各行為を併合罪(刑法45条前段)として処理せず、一連の犯行として包括一罪と認定した。これに対し被告人側は、偽造書類が複数枚である以上は併合罪とすべきであり、また正犯が途中で犯意を放棄した事実があるにもかかわらず従犯を処罰したのは不当であると主張した。さらに、他の共犯者が執行猶予とされた一方で被告人らが実刑とされた点について、平等原則違反を主張して上告した。
あてはめ
1. 被告人らが用いた偽造転出証明書は各2通であったが、原判決が認定した事実関係に照らせば、それらは同一の目的を達するための一連の行為過程に含まれる。したがって、これらを個別の罪として併合罪とするのではなく、包括して一罪と認定することは、判例の趣旨に反せず適法である。2. 共犯者の一人が執行猶予となり、他の被告人らが実刑となった点については、各被告人の役割、刑事責任の程度、情状等の個別の犯情を総合的に考慮した結果であり、不合理な差別には当たらない。したがって、法の下の平等に反するとの主張は当たらない。
結論
本件各行為を包括一罪とした原判断は正当であり、また共犯者間での量刑の差異も憲法14条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
事件番号: 昭和27(れ)201 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の証明書を偽造した行為について、単一の犯意に基づく一連の動作とは認められない場合、各証明書の作成ごとに独立した偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、人絹糸需要者割当証明書を複数枚にわたり偽造した。弁護人は、これらが単一の犯意の発現たる一連の動作によるものであり、一罪(または包括一罪)…
実務上の射程
数個の同種行為が繰り返された事案において、検察官の公訴提起の態様や原審の認定に基づき、包括一罪か併合罪かの罪数判断の適法性を論じる際の拠り所となる。また、量刑の不当性(憲法14条違反)を争う主張に対する排斥根拠としても機能する。
事件番号: 昭和24(れ)1921 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の公文書が同時に偽造された場合や、偽造と行使が牽連関係にある包括一罪等の関係にある場合、その一罪の一部について起訴があれば、起訴状に直接記載のない残余の部分についても当然に審判の範囲に属する。 第1 事案の概要:被告人らは、公文書を偽造し、これを行使して貨物係員を欺き、タイヤ等を騙取したとして…
事件番号: 昭和25(あ)2011 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 棄却
刑訴規則第一八七条第一項は、控訴審には準用されない。
事件番号: 昭和26(あ)1086 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】複数の偽造公文書を一個の行為で一括して行使した場合、一個の行為で数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)が成立する。また、公文書偽造、同行使、及びこれに伴う詐欺行為の間には、手段と結果の関係が認められるため、牽連犯(同条1項後段)として処断される。 第1 事案の概要:被告人は、偽造された…
事件番号: 昭和23(れ)190 / 裁判年月日: 昭和23年5月29日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年法律第一二四號(刑法の一部を改正する法律)は刑法第五五條を削除したが同法律附則第四項により同法施行前の行爲については刑法第五五條の改正規定にかかわらずなお從前の例によることを定めておるのである。ところで被告人の本件犯罪行爲は右改正施行の日たる昭和二二年一一月一五日前に行われたものであつて公文書僞造の各所爲…