判旨
複数の偽造公文書を一個の行為で一括して行使した場合、一個の行為で数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)が成立する。また、公文書偽造、同行使、及びこれに伴う詐欺行為の間には、手段と結果の関係が認められるため、牽連犯(同条1項後段)として処断される。
問題の所在(論点)
複数の偽造公文書を一括して行使した場合の罪数関係、および公文書偽造・行使・詐欺の各罪の間における牽連犯の成否が問題となる。
規範
偽造公文書の行使については、複数の偽造文書を一括して行使した場合には「一個の行為が二個以上の罪名に触れるとき」(刑法54条1項前段)にあたり、観念的競合となる。また、文書の偽造・行使とその文書を用いた詐欺の行為との間に「犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れるとき」(同項後段)の、いわゆる手段結果の関係がある場合には、牽連犯として、その最も重い刑により処断する。
重要事実
被告人は、偽造された予約券及び引換券各95枚を偽造公文書として行使し、さらにこれを用いて詐欺(または詐欺未遂)を敢行した。これらの行使行為は一括して行われたものであり、偽造、行使、及び詐欺の各所為は順次手段と結果の関係にあった。
あてはめ
まず、本件の偽造公文書(予約券・引換券)の行使については、それぞれ一括して行使されているため、一個の行為で数個の罪名に触れる観念的競合と認められる。次に、公文書を「偽造」し、これを「行使」し、さらにその結果として相手方を欺罔し財物を搾取する「詐欺」の各行為は、犯罪の性質上、順次手段と結果の関係にあると評価できる。したがって、これらの罪の間には牽連犯の関係が成立し、刑法54条1項により犯情の最も重い偽造公文書行使罪の刑で処断されるべきである。
結論
偽造公文書の一括行使は観念的競合となり、偽造・行使・詐欺の各罪は牽連犯となる。本件では最も重い偽造公文書行使罪の刑をもって被告人を懲役二年に処する。
事件番号: 昭和27(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】旅行者外食券を偽造する行為が刑法165条1項の有価証券偽造罪に該当することを認め、共犯関係にある被告人らに対して併合罪として懲役刑を科した。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、一般用旅行者外食券を大量に偽造した。また、当該偽造行為に付随して、配給所名を表示するためのゴム印や活字印、印刷用の原版…
実務上の射程
文書偽造罪と詐欺罪が併発する典型事案において、罪数処理の判断枠組みを示すものである。実務上は、各偽造文書ごとに罪が成立しつつも、行使の態様(一括か否か)によって観念的競合となり、さらに詐欺との関係で牽連犯(科刑上一罪)として処理されるという基本的な構成を導く際に活用される。
事件番号: 昭和27(れ)47 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】有印公文書偽造罪(刑法155条1項)において、文書の性質上、特定の項目や一部の記載が本質的な意味を持つ場合、その部分に他人名義を冒用して虚偽の記載を行うことは、文書の社会的信用を害するものとして「偽造」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、公的な発注書(証第二号の一)の作成権限がないにもかかわ…
事件番号: 昭和27(れ)201 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の証明書を偽造した行為について、単一の犯意に基づく一連の動作とは認められない場合、各証明書の作成ごとに独立した偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、人絹糸需要者割当証明書を複数枚にわたり偽造した。弁護人は、これらが単一の犯意の発現たる一連の動作によるものであり、一罪(または包括一罪)…
事件番号: 昭和24(れ)1509 / 裁判年月日: 昭和24年9月1日 / 結論: 棄却
一 一部僞造の箇所のある轉出證明書用紙を素材としてその未完成部分にさらに虚僞の事實を記入しその僞造を完成したときは、公文書僞造罪を構成する。 二 配給所主任を欺罔して米麥を騙取し、さらにその米麥を統制額を超過して販賣した場合は、詐欺罪と物價統制令違反の罪の併合罪となる。 三 物價統制令第三六條第三三條に依り懲役と罰金を…
事件番号: 昭和26(れ)1557 / 裁判年月日: 昭和27年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の虚偽の転出証明書を用いた詐欺等の犯行について、実質的に単一の犯意に基づく一連の行為と認められる場合には、これらを包括して一罪と解することができる。また、共犯者間で宣告刑に差異が生じても、犯情の個別性に基づくものである限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、共…