判旨
旅行者外食券を偽造する行為が刑法165条1項の有価証券偽造罪に該当することを認め、共犯関係にある被告人らに対して併合罪として懲役刑を科した。
問題の所在(論点)
旅行者外食券を偽造する行為が、刑法165条1項の「有価証券偽造罪」を構成するか。また、偽造に供した道具類(ゴム印、原版等)の没収の可否が問題となる。
規範
刑法165条1項にいう「有価証券」とは、財産的価値のある権利が証券に化体され、その権利の行使・移転に証券の占有を要するものを指す。本罪の保護法益は有価証券に対する社会的信頼であり、偽造行為とは作成権限のない者が他人の名義を用いて証券を作成することをいう。
重要事実
被告人らは共謀の上、一般用旅行者外食券を大量に偽造した。また、当該偽造行為に付随して、配給所名を表示するためのゴム印や活字印、印刷用の原版(亜鉛板、銅板等)、印刷用紙などを準備・使用した。被告人らはこれらを用いて組織的に偽造外食券を作成・所持していた。
あてはめ
本件の旅行者外食券は、当時の食糧配給制度下において外食を可能にする財産的権利を化体した証券といえる。被告人らは、作成権限がないにもかかわらず、ゴム印や亜鉛原版等を用いてこれを作成しており、有価証券偽造罪(刑法165条1項)が成立する。また、押収されたゴム印、原稿、亜鉛原版、印刷用紙等は、偽造行為に供され、または供しようとした物であり、かつ犯人以外の者に属しないため、刑法19条により没収の対象となる。
結論
被告人らの行為は有価証券偽造罪(165条1項)等に該当し、併合罪として懲役刑に処せられる。また、偽造に供した証券および道具類は没収される。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(れ)47 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】有印公文書偽造罪(刑法155条1項)において、文書の性質上、特定の項目や一部の記載が本質的な意味を持つ場合、その部分に他人名義を冒用して虚偽の記載を行うことは、文書の社会的信用を害するものとして「偽造」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、公的な発注書(証第二号の一)の作成権限がないにもかかわ…
本判決は、戦後の配給制度下における証券の有価証券性を認めた事例である。答案上では、特定の証票が「有価証券」に該当するかを検討する際、権利の化体性や流通性の有無を確認した上で、偽造罪の成否を論じる際の準拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)1086 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】複数の偽造公文書を一個の行為で一括して行使した場合、一個の行為で数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)が成立する。また、公文書偽造、同行使、及びこれに伴う詐欺行為の間には、手段と結果の関係が認められるため、牽連犯(同条1項後段)として処断される。 第1 事案の概要:被告人は、偽造された…
事件番号: 昭和26(あ)5184 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: その他
被告人が情を知らないA食糧事務所B出張所長Cに対し虚偽の申立を為し交付を受けた出荷証明書を行使したときは、かゝる証明書を以て偽造の公文書といえないのは勿論虚偽の公文書ともいえないこと当法廷の判例であるから(昭和二四年(れ)一四九六号同二七年一二月二五日当法廷判決参照)、これを行使した所為も罪とならないものといわなければ…
事件番号: 昭和26(れ)2439 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: その他
偽造公文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者たる公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法一五五条の偽造公文書というを妨げないものである。(大分県議会事務局印が押捺され、県議局第一〇四号という番号が附けてある同事務…
事件番号: 昭和24(れ)1509 / 裁判年月日: 昭和24年9月1日 / 結論: 棄却
一 一部僞造の箇所のある轉出證明書用紙を素材としてその未完成部分にさらに虚僞の事實を記入しその僞造を完成したときは、公文書僞造罪を構成する。 二 配給所主任を欺罔して米麥を騙取し、さらにその米麥を統制額を超過して販賣した場合は、詐欺罪と物價統制令違反の罪の併合罪となる。 三 物價統制令第三六條第三三條に依り懲役と罰金を…