被告人が情を知らないA食糧事務所B出張所長Cに対し虚偽の申立を為し交付を受けた出荷証明書を行使したときは、かゝる証明書を以て偽造の公文書といえないのは勿論虚偽の公文書ともいえないこと当法廷の判例であるから(昭和二四年(れ)一四九六号同二七年一二月二五日当法廷判決参照)、これを行使した所為も罪とならないものといわなければならない。
公務員に対して虚偽の申立をなし情を知らない公務員をして虚偽の証明書を作成させこれを行使した所為と犯罪の成否
刑法155条,刑法158条1項
判旨
公務員に対し虚偽の申立てをして公文書を作成させた場合、当該文書は公務員により適法に作成されたものであり、偽造公文書にも虚偽公文書にも該当しないため、これを行使しても偽造公文書行使罪は成立しない。
問題の所在(論点)
私人が公務員を欺いて(間接正犯的手法により)作成させた、内容の虚偽な公文書は、刑法158条1項にいう「偽造」または「虚偽」の公文書に該当するか。
規範
刑法155条及び158条における公文書の「偽造」とは、作成権限のない者が他人名義の文書を作成することを指す。また、虚偽公文書作成罪が成立するためには作成権限のある公務員が虚偽の内容を記載することが必要であり、私人が公務員を欺いて作成させた文書は、同条の「虚偽の公文書」にも、当然「偽造の公文書」にも該当しない。
重要事実
被告人は、事情を知らない食糧事務所の出張所長に対し、虚偽の事実を申し立てることによって出荷証明書の交付を受けた。被告人は、このようにして入手した証明書を外部に行使したため、偽造公文書行使罪の成否が争われた。
事件番号: 昭和26(れ)2439 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: その他
偽造公文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者たる公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法一五五条の偽造公文書というを妨げないものである。(大分県議会事務局印が押捺され、県議局第一〇四号という番号が附けてある同事務…
あてはめ
本件出荷証明書は、作成権限を有する出張所長が、被告人の虚偽の申立てに基づき作成・交付したものである。作成権限のある者が作成している以上、名義を冒用したものとはいえず「偽造の公文書」には当たらない。また、公務員自身に虚偽の認識がない以上、公務員による虚偽公文書作成罪も成立せず、当該文書を「虚偽の公文書」として扱うこともできない。したがって、これを行使した被告人の行為は、偽造公文書行使罪の構成要件を欠く。
結論
被告人が虚偽の申立てにより交付を受けた出荷証明書は、偽造公文書にも虚偽公文書にも当たらないため、偽造公文書行使罪について被告人は無罪となる。
実務上の射程
間接正犯による公文書偽造の成否が問題となる場面で活用できる。作成権限のある公務員が善意(無過失)で作成した以上、形式的にも実質的にも偽造にはならず、虚偽公文書作成罪の間接正犯(157条の不実記載罪等を除く)も否定されるという基本原則を示す射程を有する。
事件番号: 昭和27(れ)47 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】有印公文書偽造罪(刑法155条1項)において、文書の性質上、特定の項目や一部の記載が本質的な意味を持つ場合、その部分に他人名義を冒用して虚偽の記載を行うことは、文書の社会的信用を害するものとして「偽造」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、公的な発注書(証第二号の一)の作成権限がないにもかかわ…
事件番号: 昭和24(れ)1509 / 裁判年月日: 昭和24年9月1日 / 結論: 棄却
一 一部僞造の箇所のある轉出證明書用紙を素材としてその未完成部分にさらに虚僞の事實を記入しその僞造を完成したときは、公文書僞造罪を構成する。 二 配給所主任を欺罔して米麥を騙取し、さらにその米麥を統制額を超過して販賣した場合は、詐欺罪と物價統制令違反の罪の併合罪となる。 三 物價統制令第三六條第三三條に依り懲役と罰金を…
事件番号: 昭和26(れ)954 / 裁判年月日: 昭和26年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意が実質的に刑訴法411条2号(判決後の刑の廃止等)に該当する事由の主張にすぎない場合、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側は、原判決に憲法違反があるとして上告を提起した。しかし、その主張内容を検討すると、憲法違反の具体的な指摘ではなく、実質的には刑訴法411条…
事件番号: 昭和27(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】旅行者外食券を偽造する行為が刑法165条1項の有価証券偽造罪に該当することを認め、共犯関係にある被告人らに対して併合罪として懲役刑を科した。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、一般用旅行者外食券を大量に偽造した。また、当該偽造行為に付随して、配給所名を表示するためのゴム印や活字印、印刷用の原版…