偽造公文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者たる公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法一五五条の偽造公文書というを妨げないものである。(大分県議会事務局印が押捺され、県議局第一〇四号という番号が附けてある同事務局作成名義の九二式電纜解体工事委託書と題する書面であつて、少数意見は、かかる議決機関に附属する機関がかかる書面作成の権限がないこと通常人にも明らかであるとして公文書偽造罪を否定している。)
偽造公文書の意義
刑法155条
判旨
公文書偽造罪(刑法155条)における公文書とは、作成名義者たる公務所等に当該文書を作成する権限がない場合であっても、一般人がその職務権限内のものと信じるに足りる形式・外観を備えていればこれに該当する。
問題の所在(論点)
刑法155条1項の公文書偽造罪において、作成名義人として表示された公務所等に、当該文書を作成する法律上の職務権限がない場合であっても、なお同条の「公文書」といえるか。
規範
偽造された文書が、一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成されたものと信じさせるに足りる形式・外観を備えている以上は、たとえ作成名義者たる公務所等にその内容に関する権限がない場合であっても、刑法155条にいう公文書に該当する。
重要事実
被告人らは、大分県議会事務局名義で「九二式電纜解体工事委託書」と題する書面を偽造した。同書面には事務局印が押捺され、番号が付されていた。内容は、県警察部通信用資材の解体工事を特定業者に委託する旨であったが、法令上、議会事務局には執行機関としての工事委託契約を締結する権限は存在しなかった。
事件番号: 昭和26(あ)5184 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: その他
被告人が情を知らないA食糧事務所B出張所長Cに対し虚偽の申立を為し交付を受けた出荷証明書を行使したときは、かゝる証明書を以て偽造の公文書といえないのは勿論虚偽の公文書ともいえないこと当法廷の判例であるから(昭和二四年(れ)一四九六号同二七年一二月二五日当法廷判決参照)、これを行使した所為も罪とならないものといわなければ…
あてはめ
本件文書は、大分県議会事務局名義で作成され、事務局印の押捺や番号の付与といった形式を整えている。工事委託という事務が事務局の本来の権限外であったとしても、文書の全体的な形式・外観からすれば、一般人が「事務局がその権限内において作成したもの」と信頼するに足りる外観を具備している。したがって、公文書としての公信力を害する危険性が認められる。
結論
作成名義人に実質的な権限がない場合であっても、一般人の信頼を裏切るに足りる外観があれば公文書偽造罪が成立する。原判決が本件書面を公文書と認めた判断は正当である。
実務上の射程
文書偽造罪の保護法益が「文書に対する公共の信用」にあることから、形式的権限の有無よりも「一般人の信頼」という外観を重視する。司法試験では、名義人の権限逸脱や権限外の文書作成が問題となるケースで、本判例を根拠に形式・外観から公文書性を肯定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和27(れ)47 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】有印公文書偽造罪(刑法155条1項)において、文書の性質上、特定の項目や一部の記載が本質的な意味を持つ場合、その部分に他人名義を冒用して虚偽の記載を行うことは、文書の社会的信用を害するものとして「偽造」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、公的な発注書(証第二号の一)の作成権限がないにもかかわ…
事件番号: 昭和27(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】旅行者外食券を偽造する行為が刑法165条1項の有価証券偽造罪に該当することを認め、共犯関係にある被告人らに対して併合罪として懲役刑を科した。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、一般用旅行者外食券を大量に偽造した。また、当該偽造行為に付随して、配給所名を表示するためのゴム印や活字印、印刷用の原版…
事件番号: 昭和25(れ)1442 / 裁判年月日: 昭和26年8月28日 / 結論: 棄却
行使の目的を以て公文書の形式を偽り、一般人をして公務所若しくは公務員がその権限内において作成したものであると信ぜしめるに足る形式外観を具える文書を作成し、以て公文書の信用を害する危険を生ぜしめたときは他の記載事項欄が空白であつても公文書偽造罪が成立する。
事件番号: 昭和24(れ)1509 / 裁判年月日: 昭和24年9月1日 / 結論: 棄却
一 一部僞造の箇所のある轉出證明書用紙を素材としてその未完成部分にさらに虚僞の事實を記入しその僞造を完成したときは、公文書僞造罪を構成する。 二 配給所主任を欺罔して米麥を騙取し、さらにその米麥を統制額を超過して販賣した場合は、詐欺罪と物價統制令違反の罪の併合罪となる。 三 物價統制令第三六條第三三條に依り懲役と罰金を…