判旨
数個の公文書が同時に偽造された場合や、偽造と行使が牽連関係にある包括一罪等の関係にある場合、その一罪の一部について起訴があれば、起訴状に直接記載のない残余の部分についても当然に審判の範囲に属する。
問題の所在(論点)
刑訴法上の審判の対象(公訴事実の同一性)に関し、包括一罪や牽連犯として一罪を構成する関係にある事実のうち、起訴状に記載されていない一部の事実について、裁判所が審判を及ぼすことができるか。
規範
偽造公文書の行使が包括一罪と認められ、かつ、その偽造行為が行使行為と牽連の関係にある等、偽造と行使を通じて一罪を構成する場合、その一罪の一部にあたる事実が起訴されていれば、明示的な起訴がない他の部分も審判の範囲に含まれる。また、複数の文書が同時に偽造された場合、その一部の偽造について起訴があれば、同一の罪に属する他の文書の偽造についても審判の対象となる。
重要事実
被告人らは、公文書を偽造し、これを行使して貨物係員を欺き、タイヤ等を騙取したとして起訴された。原審は、複数の文書(甲、乙、丙各票)が同時に偽造されたこと、および、複数の行使行為が包括一罪であることを認定した上で、起訴状に直接の記載がなかった丙票の偽造や、行使行為の一部についても有罪として審判した。これに対し弁護人は、起訴がない事実を審判した違法があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決が認定した丙票の偽造は、起訴にかかる甲、乙各票と同時に偽造されたものであり、一罪の一部を構成する。また、各偽造公文書の行使についても、それぞれ包括一罪と認められ、さらに偽造行為との間に牽連関係が認められるため、全体として一罪に帰着する。このように、起訴された事実と一体不可分な関係にある一罪の一部については、明示的な起訴を待たずとも当然に審判の範囲に属すると解される。したがって、原判決がこれらの事実について審理・判断したことに手続上の違法はない。
結論
包括一罪や牽連犯等の一罪の一部が起訴されている場合、起訴状に記載のない他の一部についても審判の範囲に属するため、裁判所はこれを確認し、有罪判決の基礎とすることができる。
事件番号: 昭和25(あ)2011 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 棄却
刑訴規則第一八七条第一項は、控訴審には準用されない。
実務上の射程
訴因の変更(刑訴法312条1項)を要せず、審判の対象がどこまで及ぶかという「公訴事実の同一性」の範囲内の処理として、包括一罪の一部起訴による残余事実の審判可能性を肯定する素材として活用できる。特に偽造・行使・詐欺が連続する事案において、一罪性を根拠に審判範囲を広く認める論理として重要である。
事件番号: 昭和27(れ)201 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の証明書を偽造した行為について、単一の犯意に基づく一連の動作とは認められない場合、各証明書の作成ごとに独立した偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、人絹糸需要者割当証明書を複数枚にわたり偽造した。弁護人は、これらが単一の犯意の発現たる一連の動作によるものであり、一罪(または包括一罪)…
事件番号: 昭和26(れ)1557 / 裁判年月日: 昭和27年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の虚偽の転出証明書を用いた詐欺等の犯行について、実質的に単一の犯意に基づく一連の行為と認められる場合には、これらを包括して一罪と解することができる。また、共犯者間で宣告刑に差異が生じても、犯情の個別性に基づくものである限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、共…
事件番号: 昭和23(れ)1490 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
配給主食糧は正式の通帳なくては配給所の係員はこれを交付することは許されないものである。かかる物資を正式の通帳を所持する如く装い、これを受領すべき正當の理由がないに拘はらず、配給所の係員を欺いて交付させ受領した以上、刑法第二四六條第一項の詐欺罪が成立したものというに充分である。金銭的計算關係において自己が不當の利益を得、…